言の葉コラム:『二葉亭四迷が訳したI LOVE YOU』 中学3年の時、授業で二葉亭四迷が日本で最初にILove Youを「御大切に」と訳したと習った。 ILove Youという言葉が入って来るまで、「愛」という言葉も概念もなかった。惚れるだの、慈しむ、大事に思うという概念はあったのだろうが、「愛」という言葉もなかったのだから、「愛という概念」もないのは頷ける。 しかし、ILove Youという言葉を訳さなければならない四迷は、悩み抜いた末、「御大切に」と訳したというのだ。 「御大切に」という訳を私はいい訳だと思う。「愛」は好きな人、相手を思いやり、大切に思う事だから、この訳は「愛」の本質をついていると思うからだ。 この「御大切に」という気持ちに立ち返った時、自分のパートナーや恋人に感謝...2017.11.30 06:00言の葉コラム
詩:『あの花はわたし』 『あの花はわたし』 薄暗い片隅で 誰に気づかれることもなく 陽の当たることもない 湿った土の 夜のような 昏さの中で咲く あの花はわたし あなたと 出逢うまえの ちっぽけで 臆病だった 愛を知らない あの花はわたし詩:麻美 雪2017.11.29 06:10詩
劇団おぼんろ12回本公演:『ゴベリンドン』 2年前の6月5日、吉祥寺シアターで劇団おぼんろの12回本公演の舞台「ゴベリンドン」を観た。 実は、この舞台、ブロ友さんや交流のある役者さんの舞台を観に行く度に貰うチラシの中に入っていて一目観た時に、「リンゼイ・ケンプの「真夏の世の夢」みたい、きっと好きな世界の舞台だな。観たい。」とずっと気になっていた舞台だった。 観に行って、良かった❗観なかったら、きっと一生後悔したと思う、今まで観た日本人の舞台では観たことなかった本当に素敵で不思議で素晴らしい舞台。 海外の舞台の日本公演だと、バレエのリンゼイ・ケンプ・カンパニーの「真夏の世の夢」だけが、おぼんろの「ゴベリンドン」と同じ馨りを持っていて、リンゼイ・ケンプやピーター・グリーナウェイ...2017.11.28 06:28My Favorite
PhotoStoryGallery:『片隅に』 毎日なんて言いません。 気紛れでいいのです。 あなたが辛い時 寂しい時 悲しい時 切ない時 やるせない時に ほんの一瞬で構わない。 私の事を思い出してくれたら、それだけでいいのです。 たった一度こっきりでもいいのです。 あなたの一番、しんどい時に、私をぽっちり思い出してくれたら嬉しいのです。 その後、一生忘れ去られたとしても、たった1度、ちらりとでも私の事を思い出してくれたら、それだけでいいのです。 あなたの心の片隅に、目立たずに咲く花であったらいいなと思うのです。 たった1度、たった一瞬、あなたの心に咲けたら、枯れて土に還っても構わない。 あなたの心の片隅に、ぽっちりと咲く花になれたらと思うのです。photo/文:麻美 雪 2017.11.27 07:32photo story gallery
詩:『神様ひとつだけ』『神様ひとつだけ』 もしも 神様がひとつだけ 願いを叶えてくれるなら もう一度だけ あなたに会って 『愛している』 と 伝えたい あの日 言えない儘 見送ることも 出来ない儘で 開くことのない 目を やさしく閉じた あなたにさえ 私の中の あなたを 死なせたくなくて 触れることさえ せぬ儘に 人目を憚り 唇を開くことさえ 出来ぬ儘 灰になる あなたを乗せた 車の影を 熱に冒された 軆で見送ることしか 出来なかった あなたへ ひとこと 伝えたい 『愛している』 と 私から詩:麻美 雪 2017.11.24 06:06詩
幻想芸術集団 Les Miroirs第7回本公演:『アルラウネの滴り‐改訂版‐』⑤ 『アルラウネの滴り‐改訂版‐』④で、人は変わると書いた。 カスパルもフランツもフローラもブリンケン伯爵夫人クロリスも、そしてアルラウネ達も、変わって行った中で、変わらない或いは変われない存在が3人いる。 毒に魅入られ、魅せられ、毒に執着し、愛したエーヴェルスと杉山洋介さんのブリンケン伯爵とカール殿下(一人二役)である。 杉山洋介さんのブリンケン伯爵もカール殿下も艶福家。時代が変わろうが、人々が変わろうが、国の情勢がどう変わろうと関心があるのは、女性の事であり、閨での睦言、秘事である。 人は自分が見たいものを見たいようにしか見ない。社会状況がどうであろうと、時代が変わろうと自分の興味のある事しか見ず、見たくない現実に目を背ける。 ア...2017.11.22 06:03観劇記
短編小説:『プラネタリウム』 「会えないかな?」半年前何も言わずに、去って行ったあなたからの電話。 「何かあった?」 そう答えたのは、あなたの声が何かを堪えて、湿っているのを隠しきれずにいたから。口は悪くて、お腹の中は何もない、お祭り好きの下町男。 そんなあなたが、少し窶れて憔悴している訳は、お父さんの命の期限が切られたから。 ぽつぽつと、吐き出す苦しみを夜の深い時間まで聴き、抱きしめるしか術がなく眠りについた。 駅に向かう途中に入った、下町の小さなプラネタリウム。天井に映し出された夜空を見上げて、本当に恋が終わった事を知る。 初めて家族を亡くす事への孤独を抱えたあなたの隣で、もう会えない切なさが一筋頬を伝う。 いつもは、見送らないあなたの視線に、一度だけ振り...2017.11.21 07:23短編小説
思い出の本たち:『智恵子抄』 「思い出の本たち」では、物心ついてから今まで読んだ本の中から、感動した本、影響を受た本、衝撃を受けた本、お気に入りや好きな本等について書いて行く。 一回目は高村光太郎の「智恵子抄」。母に薦められて小学3年の時に読み、高村光太郎の妻智恵子への愛に息苦しいまでの衝撃と感動を覚えた。 読み終わった時、光太郎の静やかで激しい智恵子への愛に鉛の球で胸を押し潰されるような、青い大きな火柱が私の胸の中にずんと入って来た感じがした。 今でこそ、智恵子が狂気の果てに亡くなったのは光太郎との結婚によって、自分の芸術としての自分と妻としての自分の間での葛藤だの、光太郎の芸術家としてのエゴが智恵子を狂気に追いやっただのと言うが、それでも私はふたりの愛を疑...2017.11.20 06:32思い出の本たち
PhotoStoryGallery:『けなげ』 ひっそりと咲く昼顔。 凛とした一輪の花の後ろに、薄紅色の小さな花と寄り添うように、身を潜めて咲く、昼顔の花。 どちらもけなげで、どちらもほんのりと切ない。 守るものを持たぬひとり凛と立つ昼顔も、守るものを持ち、そっと寄り添って身を潜める昼顔も、どちらもいい。 ひとりの女の中に持っている顔とその昼顔は似ている。 ひとりでも生きられるけど、寄り添うよう人もいて欲しいと願う。 欲張りと人は言うかもしれない。 けれど、それでもそれぞれを緩やかに表わして咲く昼顔を、私はけなげに思ってしまう。photo/文:麻美 雪2017.11.17 07:42photo story gallery
Photo小説:『月色の花弁の白い花』 モノクロの夜。 壊れて時の止まった時計。 白い花が咲く。 色の無い世界にたったひとつ、その花弁に仄かな金の月の色を刷いた白い花が.....。 夜に浮かぶ、一点の淡き命、微かな希望のように。 どうか、手折られぬように、そっと、夜の蒼に隠しておきたい。 少女は、折れそうなほどの細い腕で、庇うように白い花を包み、夜を歩く。 誰にも見つからないように。 白白と夜が明ける、その前に。 夜が朝に溶ける前に、少女は月の色の花弁を宿した真っ白な花を胸に抱き、その身を静かに白い花の中に溶かし、夜が明け、朝に溶けるその刹那、白い花ごと朝の白に溶ける。 少女を溶け込ませた白い花が、朝の白に溶けた日は、見たこともない美しく透明な光が愛しい人の上に降り注...2017.11.16 06:15photo小説
PhotoStoryGallery:『ノスタルジー、あなた』 遠い記憶のように、薄れ行く景色。 人の顔も、抱きしめた温もりも、抱きしめられた柔らかさも、全ては遠い時間の果てにある。 ノスタルジー。 ひとことで言えば、それまでだけれど。 ひとことで終わらない、終われない時間がある。 爪の先に、目蓋の裏に、唇の真ん中に、胸の奥深く、或いは記憶の襞の中、或いは膚の奥、細胞のひとつひとつに、生温いまま残っているもの。 あなた。 あなたがまた、私の中に、ゆるく、消せない程には鮮やかに、まざまざと思い出すには薄衣を掛けたように、居る。 ノスタルジー。 あなた。 ノスタルジー。 ノスタルジーが、あなたと言う名に変わるまで? いいえ、あなたがノスタルジーという名に変わるまで、あとどれだけ、遠い記憶の中で微睡...2017.11.15 06:57photo story gallery
詩:『紅い花を摘んだのは』 『紅い花を摘んだのは』 紅い花を摘んだのは ワタシ あの人の心が 知りたくて 紅い花を摘んだのは あの娘 ワタシの心を 壊すため 紅い花を摘んだのは あの人 あの娘の企みも ワタシの想いも うんざりだったから 紅い花を摘んだのは 三つ巴の 絡まりあった思惑 後にはただ 無残に散った 紅い花びら 傷つき合った 恋が流した 紅い涙 紅い花を摘んだのは ワタシタチ 紅い花の 骸を遺して詩:麻美 雪 2017.11.14 06:36詩