モノクロの夜。
壊れて時の止まった時計。
白い花が咲く。
色の無い世界にたったひとつ、その花弁に仄かな金の月の色を刷いた白い花が.....。
夜に浮かぶ、一点の淡き命、微かな希望のように。
どうか、手折られぬように、そっと、夜の蒼に隠しておきたい。
少女は、折れそうなほどの細い腕で、庇うように白い花を包み、夜を歩く。
誰にも見つからないように。
白白と夜が明ける、その前に。
夜が朝に溶ける前に、少女は月の色の花弁を宿した真っ白な花を胸に抱き、その身を静かに白い花の中に溶かし、夜が明け、朝に溶けるその刹那、白い花ごと朝の白に溶ける。
少女を溶け込ませた白い花が、朝の白に溶けた日は、見たこともない美しく透明な光が愛しい人の上に降り注ぐという。
月色の花弁を持った白い花の伝説。
という伝説を、あなたの為に書いてみた。
沫に帰した恋に涙する、あなたをそっと包むため.....。
文:麻美 雪
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