Photo小説:『月色の花弁の白い花』

 モノクロの夜。

 壊れて時の止まった時計。

 白い花が咲く。

 色の無い世界にたったひとつ、その花弁に仄かな金の月の色を刷いた白い花が.....。

 夜に浮かぶ、一点の淡き命、微かな希望のように。

 どうか、手折られぬように、そっと、夜の蒼に隠しておきたい。

 少女は、折れそうなほどの細い腕で、庇うように白い花を包み、夜を歩く。

 誰にも見つからないように。
 
 白白と夜が明ける、その前に。

 夜が朝に溶ける前に、少女は月の色の花弁を宿した真っ白な花を胸に抱き、その身を静かに白い花の中に溶かし、夜が明け、朝に溶けるその刹那、白い花ごと朝の白に溶ける。

 少女を溶け込ませた白い花が、朝の白に溶けた日は、見たこともない美しく透明な光が愛しい人の上に降り注ぐという。

 月色の花弁を持った白い花の伝説。

 という伝説を、あなたの為に書いてみた。

 沫に帰した恋に涙する、あなたをそっと包むため.....。


文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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