「思い出の本たち」では、物心ついてから今まで読んだ本の中から、感動した本、影響を受た本、衝撃を受けた本、お気に入りや好きな本等について書いて行く。
一回目は高村光太郎の「智恵子抄」。母に薦められて小学3年の時に読み、高村光太郎の妻智恵子への愛に息苦しいまでの衝撃と感動を覚えた。
読み終わった時、光太郎の静やかで激しい智恵子への愛に鉛の球で胸を押し潰されるような、青い大きな火柱が私の胸の中にずんと入って来た感じがした。
今でこそ、智恵子が狂気の果てに亡くなったのは光太郎との結婚によって、自分の芸術としての自分と妻としての自分の間での葛藤だの、光太郎の芸術家としてのエゴが智恵子を狂気に追いやっただのと言うが、それでも私はふたりの愛を疑う事はない。
ふたりの愛は紅蓮の炎ではなく、内に灼熱を秘めた青い炎をイメージする。その青い炎が大きくなり、飲み込まれ、智恵子を焼き尽くしてしまったように思えてならない。「梅酒」という一遍を読めば、智恵子の光太郎への光太郎から智恵子への紛れも無い愛を感じる事が出来る。
ここまで、一人の人を愛しつづけられる事に感動を覚える。いつか作家になりたいと夢を持ち、趣味として今も続く詩や文章を書くきっかけになった本である。
文:麻美 雪
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