「会えないかな?」
半年前何も言わずに、去って行ったあなたからの電話。
「何かあった?」
そう答えたのは、あなたの声が何かを堪えて、湿っているのを隠しきれずにいたから。口は悪くて、お腹の中は何もない、お祭り好きの下町男。
そんなあなたが、少し窶れて憔悴している訳は、お父さんの命の期限が切られたから。
ぽつぽつと、吐き出す苦しみを夜の深い時間まで聴き、抱きしめるしか術がなく眠りについた。
駅に向かう途中に入った、下町の小さなプラネタリウム。天井に映し出された夜空を見上げて、本当に恋が終わった事を知る。
初めて家族を亡くす事への孤独を抱えたあなたの隣で、もう会えない切なさが一筋頬を伝う。
いつもは、見送らないあなたの視線に、一度だけ振り向き笑顔を向けた。私の姿が消えるまで見送るあなたの視線を感じながら、電車に乗った。
背中で扉の閉まる音を聴く。
あなたとの恋が終わった。
文:麻美 雪
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