詩:『蒼い花』『蒼い花』 ぽっちりと 誰もいない 庭の片隅に 蒼い花が咲きました 秘してひとり あの人の花が 心地よく咲くのは 此処ではないと 知った夜 心にそっと 咲いた 蒼い花詩:麻美 雪 2017.12.01 07:33詩
詩:『あの花はわたし』 『あの花はわたし』 薄暗い片隅で 誰に気づかれることもなく 陽の当たることもない 湿った土の 夜のような 昏さの中で咲く あの花はわたし あなたと 出逢うまえの ちっぽけで 臆病だった 愛を知らない あの花はわたし詩:麻美 雪2017.11.29 06:10詩
詩:『神様ひとつだけ』『神様ひとつだけ』 もしも 神様がひとつだけ 願いを叶えてくれるなら もう一度だけ あなたに会って 『愛している』 と 伝えたい あの日 言えない儘 見送ることも 出来ない儘で 開くことのない 目を やさしく閉じた あなたにさえ 私の中の あなたを 死なせたくなくて 触れることさえ せぬ儘に 人目を憚り 唇を開くことさえ 出来ぬ儘 灰になる あなたを乗せた 車の影を 熱に冒された 軆で見送ることしか 出来なかった あなたへ ひとこと 伝えたい 『愛している』 と 私から詩:麻美 雪 2017.11.24 06:06詩
詩:『紅い花を摘んだのは』 『紅い花を摘んだのは』 紅い花を摘んだのは ワタシ あの人の心が 知りたくて 紅い花を摘んだのは あの娘 ワタシの心を 壊すため 紅い花を摘んだのは あの人 あの娘の企みも ワタシの想いも うんざりだったから 紅い花を摘んだのは 三つ巴の 絡まりあった思惑 後にはただ 無残に散った 紅い花びら 傷つき合った 恋が流した 紅い涙 紅い花を摘んだのは ワタシタチ 紅い花の 骸を遺して詩:麻美 雪 2017.11.14 06:36詩
詩:『風のまぼろし』 風が忘れた 遠いまぼろし さらさらと 海の砂を 流すように 心の中を 吹き過ぎてゆく 忘れたいのでも 忘れたのでもなく ただ成すがままに あるがままに 身を任せたら 儚く消えた それだけのこと 幾年月の 時間をかけて 濾過された 透明な時間の まぼろしが 風に散った だけのこと詩:麻美 雪2017.11.02 07:03詩
詩:『願(ねがい)』『願(ねがい)』 この空に 翼ひろげ あなたの上に 堕ちて行きたい 後ろ指刺されても 何処に行く宛がなくても あなたとふたり 身を寄せ合う 庵があれば それでいい あなたしか 求めない 他の全てを 差し出しても 構わない だから 私が あなたの上に 堕ちて行ったら 両手を広げて 受け止めて それが 私が望む 全てだから詩:麻美 雪2017.08.25 08:01詩
詩:『戻らない時』『戻らない時』 もしも 許されるのなら 戻りたい時間があった けれど 今なら解る それはただ 私の我儘だったと 唇から零れた言葉も 失われた時間も 過ぎ去った日々も 零れた水のように 幾ら満たしても 元通りにならないのと 同じこと 今 私に出来ることは 省みて 心に刻み 今を明日を 真っ直ぐに 歩いてゆく事詩:麻美 雪 2017.07.31 08:44詩
詩:『遺伝子の記憶』『遺伝子の記憶』 淘汰されない 悲しみと 紅黒い 靄のような 嫉妬が 血液の中に 拡がって行く 海馬を騙して 忘れた振りをしても 遺伝子が憶えてる 淘汰されない 悲しみが 誰かを 求める度に 遺伝子を呼び覚まし 同じ傷みを 繰り返す 淘汰されない 悲しみが 目の前の あなたの愛を 拒絶する 求めればまた あなたも 私に 同じ傷みを 残すと 遺伝子の宿命に 搦め取られて 蒼黒い怯えが 細胞に浸潤して 愛の萌芽を 殺してゆく詩:麻美 雪 2017.07.28 08:24詩
詩:『ジグソーパズル』 『ジグソーパズル』 何処にも行かせない あなたがきつく 抱きしめた 虚ろな私の軆 あなたは 知っているのに 何故そんなに やさしく抱くの あなたでない 誰かが 私を壊して 棄てたこと 知っているのに あなたはなぜ そんな私を 愛せるの? 君の過去も 現在(いま)も 未来をも 愛しむのが 愛だから 柔らかく笑う あなたに 私はもう 抗う術も無い 困ったことに そんなあなたを 求めてる 虚ろな軆を持つ私 虚ろな軆も 虚ろな心も ふたりで満たして 行けばいい そんなあなたに 惚れた私と ちっぽけな私を 愛したあなた 互いの割符を 合わせてみたら ぴたりと嵌った ジグソーパズル 詩:麻美 雪2017.07.26 06:12詩
詩:『あやふや』『あやふや』 低く垂れ篭める 鈍色の雲 昼と夜の 境も曖昧になる あなたを 愛しているのか 愛していないのかも あやふやなように もう構わないわ あなたが誰と居ても 何処に居ても 今はただ ゆつゆつとした ゼリーの海に 漂うように 抗い切れない 眠りに 身を任せ 何もかも 忘れ去ってしまいたい あなたのことも 愛したことも詩:麻美 雪 2017.07.24 09:56詩
詩:『結婚』 『結婚』 見果てぬ夢を 追いかけて 終わりのない 道を歩き続けるように 来た道を戻るには 遠く 見えない終着点を 目指すには 遠いとも近いとも言えず 旅の途中で 佇む夢追人のように 揺れながら 惑いながら それでも見たい 景色のために 諦めては求め 求めては諦めてを 繰り返しながら 本能に導かれ 歩いてゆく 誰かと共に 歩いてゆくこと 共に暮らすと言うことは そういうことだから 一度繋ぎ合った 手は話さないこと それがふたりで 生きるということ詩:麻美 雪 2017.07.21 10:47詩
詩:『暮れゆく空』 『暮れゆく空』 風に吹かれて 暮れてゆく 空を見ていた 夏の昼の喧騒が 一瞬形(なり)を潜め 熱に疲れたような 淋しさを滲ませた 蝉の声 秋を一滴 垂らしたような 切なさが 空を染めてゆくのを 寂しいような 懐かしいような 甘酸っぱい 苺のような 郷愁が胸に萌(きざ)す 生温(なまぬく)い 儚さの中で ひとり 暮れてゆく空を 見ていた詩:麻美 雪 2017.07.19 09:05詩