クリム=カルム:『ロミオとジュリエット=断罪』~④役者変身~ 『ロミオとジュリエット=断罪』の観劇ブログもこれで最後。 『ロミオとジュリエット』を読み返したり、ふとあれはこうだったのではと思いついたらまた、書くかも知れませんが、内容についてはひとまずこの回で最後です。 出演されている役者さん全て、素敵だったんですが、その中でも特に印象に残り、好きたと思った役者さんについて書かせて頂きます。 高嶋友行さん、一見、ロミオがぴったりな容貌なのですが、ロミオの親友で、ジュリエットの親友であり、実はジュリエットと出逢う前にロミオが密かに恋していたロザラインの恋人であり、ロザラインを好きでいながらも女性からもモテだし、女性全般に勘違いをさせそうな素振りをしそうなベンヴォーリオーを演じてらした。 ロミオの...2018.03.30 06:08観劇記
クリム=カルム『ロミオとジュリエット=断罪』~③全体編~ 2018.3.24㈯19:00。池袋スタジオ空洞。 地下へと続く階段を降り、スタジオに足を踏み入れる。 舞台と客席の境はなく、人が横に3人も並んだらいっぱいになってしまう広さの正方形に真ん中を切り抜かれ灰色の床が見える。そのぐるりを人ひとりが佇むめる幅の紅いカーペットが囲む。 客席と舞台は地続き平らであり、唯一くり抜かれた灰色の正方形が舞台と言えるが、その正方形の上には、12個の透明な硝子の電球が吊り下げられており、その中で動こうとしたなら頭や肩にぶつかりそうな程の低い位置までその電球は吊り下げられている。 芝居をする場所は、紅いカーペットの上が大半で、正方形の中での芝居は座ったまま繰り広げられる場面だけ。 客席と舞台を分けるのは...2018.03.29 06:10観劇記
クリム=カルム:『ロミオとジュリエット=断罪』~あらすじ②~ 昨日のシェークスピアの『ロミオとジュリエット』のあらすじに続いて、今日はいよいよクリム=カルム『ロミオとジュリエット=断罪』のあらすじについて。 基本的な筋と要所要所は踏まえているクリム=カルムの『ロミオとジュリエット=断罪』。 舞台はシェークスピアと同じ14世紀、イタリアの都市ヴェローナ。 以下、クリム=カルム『ロミオとジュリエット=断罪』のホームページからの引用。 『ローマ教皇と神聖ローマ帝国皇帝との間で起こった聖職者叙任権をめぐる長い争いは、イタリア全土に火種を落とし、ヴェローナの市民を二つの派閥に分断してしまった。 ひとつは「モンタギュー家」を中心とする教皇支持派、そしてもうひとつは「キャピュレット家」を代表とした皇帝支持...2018.03.28 06:19観劇記
クリム=カルム:『ロミオとジュリエット=断罪』~あらすじ①~ 先週の土曜日、観に行ったクリム=カルム『ロミオとジュリエット=断罪』についての観劇ブログを書くにあたり、『ロミオとジュリエット』のあらすじは書かなくてもいいかとも思ったが、あまりにも有名なこの話、ロミジュリと略されて呼ばれて、(個人的にロミジュリと略す呼び方好きではない)幾度も舞台や映画、フィギュアスケートの演目にもなっているので知っているだろうと思うが、じゃあちゃんとあらすじ教えてとなると意外と知らなかったりもする。 更に、クリム=カルムの『ロミオとジュリエット=断罪』は、大筋や要所要所はきっちりとシェークスピア原作の『ロミオとジュリエット』に則っているが、原作や舞台などでも名前だけしか出て来なかったロザラインが、芝居の最後まで...2018.03.27 06:18観劇記
アクト青山:テアトロ・スタジョーネ(春)『近代古典傑作短編選「赦せない行為」』 夜の中を、千歳烏山にあるアクト青山へと向かう。 滲むように浮かぶ扉を開け、中へと入る。 目の前の舞台の真ん中にコーヒー・テーブルと二脚の椅子。 音楽は何も無くて、時折波の寄せては返すような音がするのは、外を走る車の音が空耳よろしくそう聞こえるだけなのか。 音のない音を聞きながら、開演を待ち、やがて、ぼんやり灯りに照らされ二脚の椅子が浮かび上がり、寄せては返す波の音だけが聞こえ、波音が高まるのに反比例して引き絞られるように灯が消え、一瞬闇に閉ざされた後、滲むような灯が点り、物語が動き始める。 一人の女性が部屋に入って来る。 引き出しからだらしなくはみ出した布の端を引っ張り強引に引き出しを開け、中の手紙を一通一通ひっくり返しては、誰か...2018.03.23 06:05観劇記
Photo小説:『桜めぐり』 去年、あなたと見上げた桜。 ひとりで見上げる。 繋いだ手は、話さないと誓ったあの日。 幸せな時間は、淡雪のように消え、あの夜が奪い去った。 桜の花の絨毯が、夜道を埋めたあの夜に、花見ぬ花見でしたたか酔った、男の巻き添えで桜と共に散らされたあなたの命。 握りしめた掌に、残されたプラチナの指輪嵌めた左手を、薄蒼い空に翳す。 見上げた睫毛の先に、舞い落ちる桜の花びら。 空の上から見えますか? 去年あなたと見上げた桜が、私の顔が。 目の中で、淡く滲む薄紅色の花びらが、震えて落ちて、桜の色の涙に変わる。 去年あなたと見上げた桜。 ひとりで見上げる今年の桜。 あなたの命を繋ぐ小さな人を腕に包んで見上げる、一年(ひととせ)の後に巡る春に。pho...2018.03.22 14:05photo小説
幻想芸術集団 Les Miroirs:サロン公演『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』⑤ 神を畏れぬ傲慢さで、神の怒りを買い真っ黒な雲に化身させられたアラクネのような人間がいる一方で、神に畏敬の念を持ち、愛と美の神ウェヌスを崇め、その姿を象った石像を作り、自らの作ったその石像に恋心を抱き、血の通った人間になる事を願ったピュグマリオン(朝霞ルイさん)のような人間もいる。 石像にガラテアと名付けたピュグマリオンが、ガラテアに囁く愛の言葉と愛しむように触れるその仕草の美しさに胸が高鳴る。アポロンの朗々として堂々と響く声とは対照的にやさしく何処か少年の恥じらいと繊細さを残したような声で語られるガラテアへの言葉に甘やかな誠実さを感じた。 その誠実さにさしものウェヌスもピュグマリオンの願いを叶え、ガラテアを人間に変える。 そのピュ...2018.03.21 07:11観劇記
幻想芸術集団 Les Miroirs:サロン公演『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』④ 『のちにアポロンの聖樹として栄光の証とされる薫り高い月桂樹が生まれたのは、わたしが、この上なく儚い哀しい恋の痛みを知ってしまってからのことなのだから...』という序章~世界の起源~のラストの言葉を引き継いで、目の前に現れたのは、その聖樹となるダプネの物語。 大蛇を退治し、流石の太陽神アポロン(朝霞ルイさん)も慢心が出る。その慢心から愛の神クピド(絹彦さん)をからかうようなことを言ったがために怒ったクピドがアポロンには恋心を掻き立てる金の矢、当てずっぽうに放って当たった恋心を去らせる鉛の矢に当たったのはダプネ(武川美聡さん)。 そのダプネに恋をしたのアポロン、鉛の矢のせいでアポロンを疎ましく思い逃げるダプネ。 かけ違うように仕組まれ...2018.03.20 06:27観劇記
幻想芸術集団 Les Miroirs:サロン公演『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』③ 美しい太陽神アポロン(朝霞ルイさん)が現れる。 語られるのは世界の起源。 この地球が出来、四季が作られ、ギリシア・ローマの神々が統べるこの地に、神によって最初の人間が作られるが、武器を手に争うことを覚え、殺戮と欲望に血塗られた地上の様を嘆いたユピテルが、海神・ネプトゥーヌスの力を借り、強大な洪水で大地を呑み込ませ、人間を根絶やしにした後、唯一難を逃れてパルナソスの山に避難し生き残った善良な夫婦、テウカリオンと妻ピュラが神の神託を受け、空爆の地に転がる小石から再び人間を創造し、これが今に繋がる人類の起源とされる。 キリスト教で言う所の、『天地創造』と最初の人間である『アダムとイブ』の誕生、『古事記』で言う所の『国生みの話』に当たるの...2018.03.19 06:14観劇記
幻想芸術集団 Les Miroirs:サロン公演『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』② 昨年の12月の幻想芸術集団 Les Miroirsが、月に1回開いてたサロン『cafe&bar MIROIR』以来の自由が丘にあるBAR Mum。 扉を開けると、長椅子も入れて20席あるかないかの椅子がカウンターに向かって並ぶ。 一ヶ月で創るサロン公演と銘打った試み。脚本を執筆から稽古、公演までを1ヶ月で作り上げるというサロン公演。 しかも、主題にしたのはギリシア・ローマの神話と伝説の中でも変身を主要な題材として古代ローマの詩人オウィディウスが紡ぎあげた250もの物語。 そのオウィディウスの250ある『変身物語』の中から、いくつかの物語を原型を損なうことなく尚且つ、幻想芸術集団 Les Miroirsならではの美しく耽美で...2018.03.16 06:04観劇記
幻想芸術集団 Les Miroirsサロン公演:『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』 日曜日の夜観に行った、幻想芸術集団 Les Miroirs『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』。 観劇ブログの内容に入る前に、そもそも、基にしたオウィディウスの『変身物語』って何?という事について、調べた事に読んだ私なりの解釈を加えてざっくりとした説明をしてみようと思う。 オウィディウスの『変身物語』と言われてピンと来なくても、ナルシスの語源になったナルキッソスが呪いいにより自己愛に目覚め、やがてスイセンになる話や蝋で固めた翼で空を飛んだイカロスが墜落死する話(昔、NHKのみんなのうたで『勇気一つを友にして』通称イカロスの歌なんて言うのもありました。)、太陽神アポロンが出て来る、要するにギリシア・、ローマ神話の中の変...2018.03.15 06:12観劇記
武人会:第二回公演『さくら盗り』 2018.3.8、朝から篠突く雨に鈍色に塗り込められた誕生日の昼下がり、休みを取り自宅の駅のひとつ手前の仙川にある調布せんがわ劇場へ、武人会『さくら盗り』を観に行った。 長年住んでいるのに、仙川の駅から程ない場所にこんな綺麗な劇場があるのを知らなかった。 扉を開けて劇場の中に入り、最前列のほぼ真ん中の席に座ると、目の前には坂道とそこから続く上に続く道があり、舞台が上下2段になった舞台装置があるだけ。 開演直前、ふーっと薄紅色を一滴垂らし込んだような靄のような煙が、春の陽射しのような淡い光を纏わせながら天に吸い込まれて行きゆらゆらと立ち昇ったその一瞬、桜の花の香りがふわっと薫った。本当に薫ったのか、自分が何かに瞬間誑かされて薫ったよ...2018.03.13 06:15観劇記