昨年の12月の幻想芸術集団 Les Miroirsが、月に1回開いてたサロン『cafe&bar MIROIR』以来の自由が丘にあるBAR Mum。
扉を開けると、長椅子も入れて20席あるかないかの椅子がカウンターに向かって並ぶ。
一ヶ月で創るサロン公演と銘打った試み。脚本を執筆から稽古、公演までを1ヶ月で作り上げるというサロン公演。
しかも、主題にしたのはギリシア・ローマの神話と伝説の中でも変身を主要な題材として古代ローマの詩人オウィディウスが紡ぎあげた250もの物語。
そのオウィディウスの250ある『変身物語』の中から、いくつかの物語を原型を損なうことなく尚且つ、幻想芸術集団 Les Miroirsならではの美しく耽美でありながら、神々の嫉妬や愛憎、神の血を受け継ぎながら人間として生まれた少年の傲慢と後悔、女神さえも畏れぬ己の機織りの技術に自惚れる傲慢な愚かさが災いし、女神に真っ黒な雲に変身させられる娘の話など、7編の短い朗読や芝居を紡いだのが、この幻想芸術集団 Les Miroirsのサロン公演である『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』だ。
カウンターの上や店内のBARを想起させるもの全てに白い布がかけられ、カウンターや店内のそちこちには、真っ白に化粧(けわい)を施された枝が置かれている。
帰りの道すがらふと思い至ったのは、このカウンターは、古代ギリシア・ローマと現代の境界であり、古代ギリシア・ローマの神々と人間の間の結界なのではないかと。
結界だとすれば、神々は全てカウンターの中からい出(いで)ることは無く、人の子や太陽神アポロンとの間に子であるパエトーンを授かり、人間と夫婦となり、自らも一人の母として太陽神アポロンを父に持ちながら、人間の少年として生い育ったパエトーンが、カウンターの外にいることに得心がゆく。
パエトーンは、後に、父アポロンに懇願し、父の頭に頂く冠と太陽の炎を運ぶという空を駆るクアドリガに乗る権限を1度だけ与えられて結界の中に入るのだが、それはまた、後日触れて語るとする。
たった1ヶ月で、これだけのものを主題にして脚本を書き上げ、更に稽古をして、上演する事の凄さを犇々(ひしひし)と膚に感じ、強く打たれた。
それだけに、2つほど残念だと思ったことがある。
ひとつは、BARでの公演であるから致し方ないとは思うのだが、上演中にお店の電話が鳴ったり、途中から入って来られた方の開けるドアの音に一瞬気が削がれ、古代の神々の世界から現代へと心を引き戻されたこと。
もう1つは、観客との距離がほぼない状態であり、幻想芸術集団 Les Miroirsらではの流麗で華やかな台詞と舌を噛みそうな古代の神々の名前、稽古時間も多くはなかったろう中であレだけの物を創り出すのは大変な事であり、素晴らしいと思う反面、それ故なのか、言葉、台詞が縺れたり、言い損ねたりする所が、普段劇場で観てそういう箇所があっても気にならないのに、今回は多くそういう箇所あったからか、気になった。
すーっと、古代ギリシア・ローマの神々の世界へ惹き込まれ入り込んでいたから尚のこと、言葉の縺れ、言い損ね、言い淀みが多いと現実に引き戻されてしまうので、そこが残念だっのと少しに気なった。
がしかし、それを差し引いても、私はこの幻想芸術集団 Les Miroirsの『METAMORPHOSES~メタモルフォセス~』は好きだし、観られて良かったと思う。
出演されていた役者さんたちが素敵だからこそ、観る側の求めるものが高くなってしまう。紡がれた物語も、紡ぎ織り成した役者さんたちも素敵で、好きだから更にもっとと思ってしまう。
今日は、あらすじを交えて、内容について書こうと思ったのに、ここまででまた長文になったので、次回からはあらすじ含めてちゃんと内容の感想についても書きます。
文:麻美 雪
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