美しい太陽神アポロン(朝霞ルイさん)が現れる。
語られるのは世界の起源。
この地球が出来、四季が作られ、ギリシア・ローマの神々が統べるこの地に、神によって最初の人間が作られるが、武器を手に争うことを覚え、殺戮と欲望に血塗られた地上の様を嘆いたユピテルが、海神・ネプトゥーヌスの力を借り、強大な洪水で大地を呑み込ませ、人間を根絶やしにした後、唯一難を逃れてパルナソスの山に避難し生き残った善良な夫婦、テウカリオンと妻ピュラが神の神託を受け、空爆の地に転がる小石から再び人間を創造し、これが今に繋がる人類の起源とされる。
キリスト教で言う所の、『天地創造』と最初の人間である『アダムとイブ』の誕生、『古事記』で言う所の『国生みの話』に当たるのが、太陽神アポロンに化身した朝霞ルイさんが朗読した『世界の起源』。
世界の起源は、パルナソス山腹をすっかり覆うほどのピュラトという大蛇をアポロンが倒し、そのアポロンの武勲を留めるような神聖な競技会をアポロンに奉納する事が定められ、倒された大蛇の名を冠し、ピュティア祭りは初めは8年に1度の開催が4年に1度となり、芸術の祭りだったものに体育競技が加わり、勝者には樫の葉の冠が贈られた。
その頃はなかった月桂樹の冠が贈られるようになったのは、この後に続く太陽神アポロンのこの上もなく儚く哀しい恋の痛みを知ってから後のこと。
朗々と響く朝霞ルイさんの太陽神アポロンの声が、物語を語る時、此処が自由が丘のBAR、Mumである事を忘れる。
混沌が蒼い星になり、国が作られ、四季が芽吹き、人が生まれ、滅ぼされ、新たに創造され、現代へと脈々と命を繋ぐ祖になった、人間と神々のいます古代ギリシア・ローマの地となり、風を感じた。
淀みなく滔々と流れる水のような流麗な言葉が、心地好く軆の中に古代ギリシア・ローマの風景と共に流れ込んで来る。
『わたしが、この上なく儚く哀しい恋の痛みを知ってしまってからのことなのだから』
朗読の最後の一文であり、次の『ダプネ』への序章とも言えるこの言葉が、次に起こる切なくも哀しい恋のあらましを想像させて、心が疼いた。
文:麻美 雪
→④へ続く。
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