芸術集団れんこんきすたvol.28:『リチャードⅢ世』② マーガレットの息子エドワード王太子の妻であり、幼馴染のリチャードによって夫エドワード王太子殺害され、のちにリチャードの甘言と奸計により、リチャードの妻となり、やがてリチャードの手にかかり命を落とす木村美佐さんのアン・ネヴィルは、儚くか弱く運命に翻弄されているように見えながら、芯に凛々しさを持った気高さと、夫を殺され、幼い頃のリチャードの優しい面影を覚えていた為に、リチャードの言葉を信じ裏切られ、殺された悔しさと憎悪からリチャードを呪う。マーガレットのマグマのような怨みではなく、藍(あお)い沼の水が冷たく沸き滾るような憎しみを感じた。 中村ナツ子さんの王子エドワードは、聡明で凛々しく、美しく、勇気ある王子の中の王子。エドワード四世の...2018.04.25 07:25観劇記
芸術集団れんこんきすたvol.28:『リチャードⅢ世』① 初演を観た時からずっと思っていた事がある。 なぜ、リチャード三世は、あれ程までに残虐非道な国王として弾劾され、流布され続けているのか? なぜ、母のヨーク公夫人は、自分のお腹を痛めて産んだ我が子リチャード三世を憎悪し、忌み嫌い、生まれ落ちたその瞬間から一度も愛する事がなかったのか? 本当に、リチャード三世はあんなに残虐非道な人間だったのか? この3点に対する疑問が、初演を観てから3年間ずっと心の片隅に残っていた。 10人の弾劾者と1人の理解者であろとした者、時の為政者、権力者により実像を歪められ、残虐非道の国王として弾劾され、流布され続ける1人の国王と、近年の研究で歪められた残虐非道の国王とは異なる実像を持つのではないか...2018.04.24 09:14観劇記
芸術集団れんこんきすたvol.28『リチャードⅢ世』序 2018.4.22㈯高円寺アトリエファンファーレ。 この日、私は、午後の全てをこの場所で過ごした。 芸術集団れんこんきすたvol.28『リチャードⅢ世』を観る為に。 夏の陽射しのような土曜日の昼下がり、3年前に出来た高円寺アトリエファンファーレの扉を開け、劇場の中へと入る。 3年前(2015年)と言えば、奇しくも芸術集団れんこんきすたの『リチャードⅢ世』の初演も、3年前の4月だった。 昼の回は、最前列の真中の席に座り、ふと正面を見ると、すぐ目の前には、長方形の舞台、舞台奥の天井から吊り下げられたシャンデリアがひとつ、その下に白木の飾りひとつないベンチが2台。 舞台装置と言っては、それしかない。 その舞台の片隅に、影のように蹲り座る...2018.04.23 09:26観劇記
Dangerous Box:綾艶華楼奇譚第四夜『晩餐狂想燭祭~死~』③ 八文字家の用心棒のREONさんの霧条。お花(小野友花里さん)が初めての恋心を抱いた最初で最後の男であり、自分の思いを受け入れられず我を失くした八文字に霧条が実は女である事を告げられたお花の中で何かが壊れ、その瞬間心凍らせたお花が一華になったきっかけになった男。 どんなに愛しても、愛されてもむすばれることのない、霧条とお花。 お花に対する想いを最初は抑えていたが、抑えきれないお花への想いが募ってゆくに従い、お花と生きたい、幸せになりたい、もしかしたらその儚い願いは叶うのでは無いかと刹那の夢を見、その夢は八文字によって砕かれ、霧条もまた絶望とお花への愛しさを胸に抱えて命果てて行く。 『愛してる』。その一言を伝えるにはあまりに遅く、それ...2018.04.19 08:59観劇記
Dangerous Box:綾艶華楼奇譚第四夜『晩餐狂想燭祭~死~』② 4階でエレベーターの扉が開くと、美しく艶やかな着物を纏った花魁たちが、綾艶華楼へと案内してくれる。 金魚のような艶やかな着物の裾を引き、登楼するお客たちを案内するその中に、どんな美しい花魁たちにも負けない目配り、気配り、心配りの行き届いた対応をしてらした方がいた。 『晩餐狂想燭祭~死~』の中では、艶っぽくカッコイイポールダンスを見せていた龍さん。会場全体を見回して、一人で手持ち無沙汰でいる人や会場の雰囲気に少し緊張している方にすっと寄って言っては、話しかけたり、嫌味のないちょっかいを出したりして、解してらして、その行き届いたおもてなしと対応は、見ていてとても気持ち良く楽しく、私も龍さんに席に案内して頂いてとても楽しく舞台を愉しむ事...2018.04.18 08:15観劇記
Dangerous Box:綾艶華楼奇譚第四夜『晩餐狂想燭祭~死~』① 風の強く吹く先週の土曜日、浅草ゆめまち劇場に篠原志奈さんが出演されたDangerous Box綾艶華楼奇譚第四夜『晩餐狂想燭祭~死~』を観に行って参りました。 『晩餐狂想燭祭~弍~』から観始めて、今回で3回目の『晩餐狂想燭祭~死~』Dangerous Box10周年というのも相俟って、今までで一番華やかで艶やかで痛くて哀しく、観終わった後に胸に刺さった切ない棘が抜けずに今もいる。 前回から2年。総勢100人。前回から加わったポールダンスに加え、エアリアルシルク、タップ、前回からの三味線と篠笛に新たにヴァイオリンとお琴も加わって、芝居だけでなく、音楽、ダンス、アクロバット、パーフォーマンスもパワーアップして、Dangerous Bo...2018.04.17 08:12観劇記
Photo小説:『月の無い夜、眠らない夢を見る 月の無い夜。 ひとりぼっちの軆。 空っぽの心。 ひとすじの光もない夜。 完璧な夜。 黒衣の静寂(しじま)に抱かれ、眠らない夢を見る。 嘘も甘い戯れ言も、忘却の彼方。 どうでもいいの、有るか無きかの恋なんて。 見たい夢を見たいように見る事も、飽いてしまった、全て虚しい我儘と知ってしまったから。 独り夜に取り残されて、星も無い宇宙を見る。 孤独の温かさを知った夜の中。 涙もなく声もなく、音のない夜の音を聴いている。 月の無い夜。 ひとりぼっちの軆。 空っぽの心。 ひとすじの光もない。 完璧な夜。 黒衣の静寂の腕に抱かれ、夢のない眠りの中に落ちて行く。photo/文:麻美 雪 2018.04.12 13:53
劇譚*花羽織:特別公演『幸福な死に際』 2018.3.31㈮ 19:30。 5ヶ月間の派遣契約期間満了を以ての退職日。引継ぎと挨拶を終え、たくさんの送別の品を抱えて、マリコさん、加賀喜信さん、高山タツヤさんが出演された劇譚*花羽織『幸福な死に際』を観る為に阿佐ヶ谷アートスペースプロットへと向かった。 人気絶頂の恋愛小説家とこのタイトルだけから想像すると、ある日突然、不治の病に罹り余命宣告された小説家が、それまでの恋愛を思い出し、最後に彼女がその中に見たもの、最後に描き行き着いたものとは...。というのが一番多く思い浮かびそう物語なのじゃないかと思う。 そんな安易な物語ではない。 【あらすじ】 人気絶頂の恋愛小説家花森詩子が、世間からも担当編集者からも、順風満帆だと羨まし...2018.04.04 07:50観劇記
アクト青山:☆テアトロ・スタジョーネ(春)『近代古典傑作短編選 白鳥の歌』 2018.3.25㈰19:30 友人と二人、千歳烏山にあるアクト青山にテアトロ・スタジョーネ(春)『近代古典傑作短編選 白鳥の歌』を観に行って来ました。 『白鳥の歌』というタイトルを目にした時、遠い記憶の後ろ側で、この言葉何かの比喩だったような気がすると何だかモヤモヤしていた。 帰宅して調べたところ、『白鳥が死の間際に歌うという歌で、その時の声が最も美しいという言い伝えから、ある人が最後に作った詩歌や曲を言うようになった。』とあった。 そうだった。白鳥の歌が死の間際に歌う生きてきた中で最も美しい声で歌う歌。それはまた、人の命の果てる間際の人が神がかったような、透明感のある美しさに輝いているのと似ている。 チェーホフは、高校生くらい...2018.04.03 09:54観劇記