Photo小説:『月の無い夜、眠らない夢を見る

 月の無い夜。

 ひとりぼっちの軆。

 空っぽの心。

 ひとすじの光もない夜。

 完璧な夜。

 黒衣の静寂(しじま)に抱かれ、眠らない夢を見る。

 嘘も甘い戯れ言も、忘却の彼方。

 どうでもいいの、有るか無きかの恋なんて。

 見たい夢を見たいように見る事も、飽いてしまった、全て虚しい我儘と知ってしまったから。

 独り夜に取り残されて、星も無い宇宙を見る。
 孤独の温かさを知った夜の中。

 涙もなく声もなく、音のない夜の音を聴いている。

 月の無い夜。
 
 ひとりぼっちの軆。

 空っぽの心。

 ひとすじの光もない。

 完璧な夜。

 黒衣の静寂の腕に抱かれ、夢のない眠りの中に落ちて行く。

photo/文:麻美 雪
 

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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