月の無い夜。
ひとりぼっちの軆。
空っぽの心。
ひとすじの光もない夜。
完璧な夜。
黒衣の静寂(しじま)に抱かれ、眠らない夢を見る。
嘘も甘い戯れ言も、忘却の彼方。
どうでもいいの、有るか無きかの恋なんて。
見たい夢を見たいように見る事も、飽いてしまった、全て虚しい我儘と知ってしまったから。
独り夜に取り残されて、星も無い宇宙を見る。
孤独の温かさを知った夜の中。
涙もなく声もなく、音のない夜の音を聴いている。
月の無い夜。
ひとりぼっちの軆。
空っぽの心。
ひとすじの光もない。
完璧な夜。
黒衣の静寂の腕に抱かれ、夢のない眠りの中に落ちて行く。
photo/文:麻美 雪
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