あの日から、部屋の隅で、色褪せ、渇いて時を止めた花。
残り香も今は無く。
凍った時間だけが漂う部屋。
あなたといつも語らった喫茶店。
10年振りに何気なく立ち寄って、見るはずのない幻を見た。
あなたと私の間に凍った時が溶け出して、ゆっくりと動く。
証のないあなたの左手と私の左手。
あなたの温もりが、私の胸に色を注(さ)す。
渇いて、色を失くした部屋の花を染めて。
もう一度だけ、このまま二人の時を止めて。
photo/文:麻美 雪
麻美 雪♥言ノ葉の庭
昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。
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