2019.5.29㈬ PM19:30 仙川 せんがわ劇場
THEATRE MOMENTSの『#マクベス』を観る事に決めたのは、9日前。きっかけは、篠原志奈さんの『BARカラクリ危箱』に遊びに行った時、『麻美さん、きっと好きだと思うので、是非、観て欲しい。』とオススメされたこと。
以前に志奈さんから、THEATRE MOMENTSの『楢山節考』の舞台がとても面白くて、最高の舞台だったと聞いていて、気になる劇団であったのに加え、マクベス夫人役の中原くれあさんのインタビューをYouTubeで見て、更に観たくなり、直ぐにチケットを取り、9日後には、せんがわ劇場の客席に居た。
昨日の夜の回が初日、6/1㈯PM16:30が千穐楽の舞台なので、あまり詳細な感想は書けないので、感じた事だけを書くに留めたいと思う。
シェイクスピアの『マクベス』は、あまりにも有名な4大悲劇ひとつであり、先月観た劇団現代古典主義『マクベス』の観劇ブログにもその粗筋を記載しているので、あらすじの詳細はそちらをご覧頂くとして、『マクベス』とは要するに、戦の帰りに出会った3人の魔女の『王になる』という予言に気が弱く、誠実だったマクベスに野心が芽生え、その予言を妻に話した事で、夫を愛するが故にマクベスの中に芽生えた野心を実現する為、夫を焚き付け水自らも共犯となり、ダンカン王を亡き者にしたはいいが、王の地位を護り、保身に身をやつすあまり疑心暗鬼となり、気が弱く誠実だったマクベスが、残忍な暴君に成り果てて、やがて、転落して行くという物語。
シェイクスピアは難しいと思っている人、シェイクスピアもマクベスも知らない人、シェイクスピアもマクベスも知っていて、好きだという人、誰が観てもきっと『マクベス』って、こんなに面白かったんだと思える舞台。
舞台装置は無く、背もたれが梯子のようになった木の椅子と白い大きなビニールの袋を駆使し、効果的に挟み込まれるフォーメーションダンスのような動きに、台詞は無いのにマクベスやバンクォー、マグダフ、マクベス夫人、ダンカン王、マルコム王子など、それぞれの心情や心象風景、感情が表現され、それが、自分の中へ言葉となり感情となって入って来る。
THEATRE MOMENTSの『#マクベス』を観て、改めて思ったのは、稀代の悪女として描かれ、演じられ、思われて来たマクベス夫人が実は、夫を心から愛する一人の妻であり、夫への愛ゆえに、魔女の予言で内心では王になりたいと野心を抱きながら、気が弱いが故に踏み出せない夫マクベスの気持ちに気づき、何とか果たしてやりたいと思うあまり、間違った方向に夫と共に突き進みはしたものの、権力を手にし、その権力に固執するあまり、疑心暗鬼になり親友バンクォーと息子とその家族をも亡き者にしようとする夫を見て、自らの過ちに気づき必死に止めようともする、夫を愛する一人のつまであり、女出会ったということ。
翻って、気弱ではあるが、誠実で野心を持たなかったマクベスは、魔女の予言で芽生えた野心に翻弄され、権力を持ったが故の疑心暗鬼から、人として狂って行き、妻の制止も聞かぬほどの暴君へと成り果て、やがて転落して行く一人の愚かな男であり、権力に絡めとられた憐れな男であり、シェイクスピアの頃から400年経た今もまた、このような人間は悲しいかないる。
そう思うと、マクベス夫人もマクベスも、『マクベス』に描かれている事も、今の世でも繰り返され、存在する人々であり、決して古くも解りづらくもない話しだと言う事が解るだろう。
シェイクスピア、『マクベス』への入口として、一番解りやすく、面白い舞台だと思う。
椅子と白いビニールが、どのように効果的に使われ、何をどのように表現しているのか、その面白さと見事さは、実際にその目で観なければ解らないし、だからこそ、この舞台は一人一人のその目で観て欲しい。
それらが芝居と、ひとつに合わさった時の面白さと奥深さには、やはり、自分の目で観なければ解らない。
だからこそ、是非、観て欲しいと強くお薦めしたい舞台。
文:麻美 雪
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