劇団ピエロ旗揚げ公演:『希望』

2019.6.1㈯ PM15:30 学芸大学 千本桜ホール

 暑いけれど快晴の心地好い昼下がり、東横線学芸大学駅から歩いてすぐの所にある千本桜ホールに、井上四葉さんが振り付け、ダンサーとして小川麻里奈さん、お芝居に武川美聡さんが出演されている劇団ピエロ旗揚げ公演『希望』を観に行って来ました。

 劇団ピエロの旗揚げ公演は、落語、ダンス、芝居のスリーパフォーマンスという、初めて観る形態の舞台。

 それぞれが、独立しているのではなく、落語からするりとダンスに流れ込み、更にダンスから芝居へと繋がり、芝居の中でもDANCEが散りばめられるという、正に、落語とダンスと芝居のスリーパフォーマンス。

 それ故に、この舞台の詳細な感想を書くのは難しく、書くと言うより、百聞は一見にしかずで、考えるより目の前で繰り広げられるパフォーマンスと芝居をその目で観て欲しい舞台であり、自らの目で観て感じる事で、面白さもワクワクも、その中から伝わり感じる取れる舞台なので、その場に身を置き、観ることでしか感じ得る事が出来ない舞台であり、本日が千穐楽なので、私が感じたいくつかの事を書くに留めたい。

 今日の17:00の回が千穐楽なので、もし、このブログを読んで興味を持たれ、間に合う方は観て欲しい。

 幕開けは、柳家花ごめさんの落語を一席たっぷり。この一席は、私の好きな人情噺で、歴代の花魁高尾太夫の中でもその美貌と教養と心意気で随一と言われた高尾太夫の花魁道中を見た、真面目で腕の良い紺屋(藍染職人)職人の久蔵が高尾に惚れ、恋煩い陥り、見かねた親方が3年働きお金を貯めて、高尾に会いに行けといい、3年後高尾に会うために醤油問屋の若旦那と身分を偽り、遊廓に高尾を会いに行き、正直に自分の身分と想いを打ち明け、その久蔵の心根に惚れた翌年年季が明けた高尾が久蔵の元に身一つで嫁に来るという『紺屋高尾』という人情噺。

 この噺は、久蔵の誠と高尾の真が、清々しくも美しいしみじみとした良い話しで私が好きな人情噺をたっぷり聴けて嬉しかった。

 その後もうひとつ、知ったかぶりの周りの人たちに先生と呼ばせて悦に入っている御仁を揶揄う短い噺の最後の方で、ダンスへとシンクロして、するりと井上四葉さん振り付けのダンスへと流れ込み、小川麻里奈さんを含めた5人の様々な曲に乗せ、時に格好良く、時に切なく、時に楽しく、時に艶っぽいダンスがステージを彩る。

 中でも、宇多田ヒカルの『First Love』に乗せたダンスでの小川麻里奈さんの表情とダンスから、止めどない切なさが身体に伝わって来て、自分でも初めての事で、何故なのか解らないうちに涙が込み上げて来て零れた。
 ダンスから最後の芝居『英雄になったその日』へと流れ込む。ファミコンゲームをした事のない私でも知っている、あの有名なロールプレイングゲームの勇者たちとサタンたちのその後を描いた『英雄になったその日』は、これから観られる方も居ると思うので、詳しくは言えないのですが、紆余曲折あって、最後に胸の中に落ちて来た言葉は、『希望』だった。

 武川美聡さんのリリスは、艶っぽくて悪役なのに格好良かった。

 そう、この旗揚げ公演のタイトル『希望』である。最後まで観るとこの芝居の『英雄になったその日』への意味が、そういう事かと腑に落ちる。

 全編笑いに溢れ、6月のスタートを切るのに相応しい、楽しく、明るく、華やかで、元気になる舞台だった。

文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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