2019.3.24 ㈰ PM13:00 千歳烏山 アクト青山アトリエ
歩くと汗ばむ程の麗らかな晴天の下、演劇集団アクト青山の最後の公演、『岸田國士傑作短編選 『紙風船』』を観に向かった。
アトリエに入り、窓を背にした正面の席に着き、目を転じると、目の前には真ん中に紙風船やけん玉など、雑多のもが溢れた長方形の台とそれをさゆうにはさんだ、畳一畳を敷き座布団を二枚並べた一段高い台、舞台ひだりすみに麦わら帽子を背もたれに掛けた椅子が1客ある。
左の舞台には新婚1年の夫婦、右の舞台には、初老に差し掛かった夫を亡くしたと思われる妻が座っている。
結婚一年目を迎えた若い夫婦の倦怠期の、妻(華奈さん)と夫(高村 賢さん)の微妙なすれ違いを、数十年後の姿(出田 君江さん)との対比と時に若き日の妻と台詞が重なり合い、時に若き日の夫と言葉が重なり合い、時に数十年後のつまが結婚1年目の倦怠期と今、夫との生活を振り返り夫に思いを馳せぽつりと零す独白と新婚1年目の倦怠期の夫婦のとある日曜日のやり取りと一コマから描いた話しが紡がれて行く。
これがアクト青山のアトリエで観る演劇集団アクト青山の最後の公演だと言うのを抜きにして、何かしみじみと結婚とは、夫婦とは何かと考え、大切な人の事を考えた。
恋から恋愛に移ろい、新婚のただ一緒に居るだけで楽しい心浮き立つ次期も鎮まり、何をするではなくても、一緒にゆっくりとした日曜日を過ごしたい妻と、休みに友人と会ったり、一人で出かけようとする夫に、妻の小さな不満が積もって始める倦怠期は、長年連れ添った中年期の倦怠期に比べたら、まだ、それすらも初々しいのかも知れないと、結婚はしていないが結婚した友人たちから聞かされる話と照らし合わせて思った。
夫婦に限らず、往々にして、夫と妻、男と女の感情やタイミングや様々なズレやすれ違い、求めているものの違いに、「そう、それなんだ」と私を含めて、誰でもが一度は感じた若しくは感じるであろう心象風景が、しみじみと仄かに切なく、丁寧に描き出されていた。
新婚1年の夫婦は今、懐かしく、ほろ苦く、長年連れ添い看取った妻は未来なのかも知れない。新婚1年のかわいい倦怠期は、未来の妻には懐かしく、愛しく思い返せる思い出なのかも知れない。何故なら、件待機もすれ違いにかわいい不満を抱いたのも、夫が居ればこその思い出なのだから。
観終わった後、しみじみとした温かい切なさに、心浸された舞台だった。
これが、演劇集団アクト青山の最後の公演。去年の2月から毎月、演劇集団アクト青山の舞台を観に通った、このアトリエにも、演劇集団アクト青山の舞台を観られなくなってしまうのはとても寂しい。
けれど、また、小西優司さんは新しく立ち上げ、演劇集団アクト青山の役者さんたちも、活躍されている様子を知るにつけ嬉しく、これからも応援して行こうと思っている。
春は別れと出会いの季節。
この『紙風船』は、演劇集団アクト青山の最後の公演に相応しい舞台だった。
文:麻美 雪
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