2019.1.18㈮ PM14:00 高円寺 haco
風は冷たいけれどよく晴れた昼下がり、高円寺の高架下、居酒屋に挟まれた小さなスタジオ、koenji hacoに宮岡志衣さんが出演された、プラズマニア Petit Play vol.1『空想ノスタルジア』を観に足を運んだ。
中に入ると、舞台装置も、照明もほぼないような舞台と客席の境さえもあるか無きかの舞台で紡がれたのは、恐らくは災害に遭ったと思われる姉妹と、災害かは定かでないが前後するように、両親を早く亡くした姉妹を育ててくれた祖母の死によりその衝撃で記憶を失くし、心を閉ざした妹イクコ(中島 魁さん)と、イクコの記憶の戻ることを願う姉ムツミ(宮岡志衣さん)、イクコの記憶を取り戻す手助けをするセンセイ(谷口健太郎さん)と助手キコ(吉倉明里さん)4人による、理不尽によって記憶を失ったイクコの理不尽に抗う気力を取り戻し、再生しようと一歩踏み出そうと葛藤する姿を描く物語。
感情も、思い出も全て失ったイクコとイクコの記憶が戻り、イクコの心の再生を願うムツミと自らも妻を失い抱えた絶望を振り払う夢をイクコに重ねながら見るセンセイ、幼かったキコの失くした宝物を一緒に探してくれたセンセイを支えようと見守るキコの4人の想いと悲しみと絶望が、重なり、混じり合い、最後に微かな希望の色を宿した温かいハーモニーを奏でる。
観ながら思った。突然、理不尽に見舞われた時、人はどうなり、どうするのだろうか。人生にも世の中にも理不尽は溢れている。人為的な理不尽や病による理不尽ならまだ対処出来るとして、事故や自然災害による理不尽に襲われた時、人は受け入れられず、立ち止まり壊れる事もある。
そうなった時、人はその事にどう立ち向かい、立ち直り、乗り越えて行くのだろうか。空想ノスタルジア は、そんな事を強く胸に響かせ、考えさせられる舞台だった。
傷つきながら、傷つけながら、向き合う恐さと戦いながら生きる為に向き合おうとする主人公の姿とそれを見守り待つ家族に胸が熱くなり涙が込み上げた。
1時間とは思えない人の思いがギュッと濃縮され、しみじみと胸に沁み入る舞台だった。
文:麻美 雪
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