『Aurora』2018.10.27観劇
幻想芸術集団 Les Miroirsの朝霞ルイさんと芸術集団れんこんきすたの中川朝子さんの男役二人によるユニットLe Matinのライブイベントのみで上演された、Le Matinファンに人気の高い短編芝居。8月のLe Matinで完結した物語。
亡くなり、手の届かない場所へ行ってしまった一人の女性をめぐる二人のタイプの違う男の喪失とやがてそれを受け入れて行くまでの物語。詳しい感想や内容などは、以前書いた『Le Matin‐ル・マタン‐vol.2、3』のブログを読んでいただければと思います。
1話目と最終話を見逃していたので、全編通して観たことで、全てが繋がり得心がゆくものであり、この結末である事がとても良かった。愛する者を亡くした喪失により、止まったかのような二人の男の時間が、5年の時を経て、それぞれの生き方と思いを胸に持ちながら、動き出し、生き始める仄かな光が胸に兆した。
中川朝子さん演じる男には奔放で我儘、朝霞ルイさん演じる男には、控えめで穏やかで儚く優しい女であった一人の女。それは、女の中にどちらも存在していた感情や性格であったろう。女は、共にいる相手によって、互いに心地好い自分であったのではないだろうか。それはそのまま、二人の男の性格や性質を表す。
二人とも違うタイプの不器用さで、一人の女を愛した。そのどちらの男の愛し方、思いが胸に強く抉るように響いて来る。だから、とても好きな物語なのに、観た後は、切なさに胸が塞がれ涙が溢れて、どうして良いか分からなくなる。『Aurora』については、『Le Matin‐ル・マタン‐vol.2、3』で、書いた以上の事は書けそうにない。ただ、とても切なく、美しく悲しく、儚く、けれど、愛すること思うことの深さと強さ、絶望的な喪失感のどん底から、やっと一筋の光を見つけた清しさ、残されたも者が生きる時間、それさえも無限ではない。だからこそ、愛した人の生きられなかった時間も、その人の俤と共に生きてゆくことは、例え、他の人と生きたとしても、その人を忘れるわけではなく、共に生きる人に不義理をする事でもない。
どちらをも愛し、大切にする事なのだと思う。無理に忘れなくていい、その人が遺した物が今の男を形作り、今共に生きようとする人に、より真摯に思いを込めて対するのなら、それはしなやかな強さと美しさであり、どちらをも大切に思うことなのではないだろうか。
そしてまた、ひとり、その人の面影を抱き、自分の中に生きるその人と歩むことも、愛する者を大切に思い、けれど、過去に囚われるのではなく、その人の生きられなかった時間を大切に生きる時、その人と共にその男もまた生きておるのではないかと思う。
切なく苦しく儚く悲しいけれど、強い愛の話だった。
文:麻美 雪
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