劇団・風凛華斬:『flying stage!』

 2018.10.20(土) PM14:00 高円寺アトリエファンファーレ

 幻想芸術集団 Les Miroirsの舞台を観に行ったのがご縁で知り合った、ROBINさんが出演される劇団・風凛華斬第17回公演『flying stage!』を観に行った。

 ライト兄弟による人類初の有人飛行から数十年後のヨーロッパのとある街で、冒険飛行家の父を持つ孤児の少女・ミラは古ぼけた飛行機を発見する。

 自分が冒険飛行家の娘だと知らないまま孤児院でそだったミラは、物心着いた時からそれとは知らず父の遺品のゴーグルと大空に惹かれる心を持って育つ。

 ある日、ひょんな事から裕福な家庭に育つナイルたち知り合ったミラは、ナイルと一緒に偶然、今は使われていない倉庫に古い飛行機を見つける。整備すれば乗れる事が解り、ナイルやナイルの友達で貴族の家に育つアルファルド、ティコ兄妹と共に大人たちに内緒で飛行機を飛ばそうとするのだが…。
 小説で言うと、主人公の青春、葛藤、愛憎、交友、自由な空想などを含む少年少女の成長物語を意味するジュブナイル小説を舞台に移したような物語。
 ジュブナイル物語を侮ってはいけない。少年少女の成長物語と言っても、『小公女』『小公子』『十五少年漂流記』しかり、その中には、青春風景や成長物語だけでなく、青春ゆえの葛藤、愛憎、嫉妬、身分の差からくる差別やらすれ違いもえがかれているものもあれば、自由な空想の翼を広げた冒険だって、友情だってある。

 要するに、大人が大人になるために辿って来た人生の道筋が描かれているのである。

 そして、この『flying stage!』は、子供の頃に読んだ、そんなワクワク、ハラハラ、ドキドキするジュブナイル小説を体現した舞台。

 男勝りのカッコイイ女の子と、優しくて頭は良いけれど、気が弱くていじめられっ子の男の子といじめっ子、いじめっ子の少年の良き友達とわんぱくで明るいその少年の妹、その少年に積極的に言い寄る我儘なお嬢さま、男勝りの女の子の夢の実現を邪魔しようとする大人たち。その大人たちの目を掻い潜って、夢を実現させ、その中で変わって行く子供たち。

 そんな子供の頃に読んだお話とその時の高揚した気持ちを、この舞台が思い出させてくれた。

 質の良い児童文学は、大人の心にこそより深く、鮮明に響く。『flying stage!』は、そういう上質で懐かしいジュブナイル物語を読んだような爽快で、温かくて、優しく力強く生きて行く事の清しさを胸に残す舞台だった。

文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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