2018.10.17㈬ PM19:00 コフレリオ新宿シアター
飯田南織さんが出演されるベニバラ兎団『パンプキン・ポット・マジック』を観る為に、1ヶ月ぶりに新宿のコフレリオ新宿シアターに足を運んだ。
劇場の中に入ると、天井からにっかりと満面の笑みを浮かべクモの巣が纏い付いたジャック・オ・ランタンがいくつも吊され、舞台には黒とオレンジの縁取りのされた四角い箱が置かれ、向かって右手の隅にはクモの巣の絡まったキーボードが置かれていた。
生演奏と共に始まったのは、ハロウィンに纏わる物語。
ハロウィンの朝、ホームで電車を待っていた仕事と職場の人間関係に倦み疲れた麻知子(八坂沙織さん)が、ハロウィンの仮装をした人々が、宙に浮き始めたのを呆気に取られて見ていると、向かいのホームからアスカ(舞川みやこ)が必死に何事かを叫んでいる。
自らを魔女だと名乗るアスカによって、麻知子は、『パンプキン・ポット・マジック』行く電車に乗せられ、東京新宿によく似た、魔女の国にあるシンジュークで、次から次に巻き起こる事柄に巻き込まれるうちに、麻知子の中の何かが変わって行く…という物語。
この物語を、朗読劇でありながら、朗読だけでなく、歌とダンスを絡めて、女性だけでギュッと凝縮して織り成した舞台。
朗読なのだけれど、朗読ではなく、約1時間半のミュージカルを観たような楽しくも、働いている女性が誰しもが感じるような、仕事や職場での心身の疲弊と疑問と先の見えるようで見えない不安や息苦しさや迷いや惑いも笑いの中に散りばめられながら描かれている。
それは、働く女性だけでなく、男女の別なく、人が生きていれば誰しもが人生の中で一度や二度は考え、思い、味わう事。それをシリアスに偏ること無く、随所に散りばめられた笑いで、描いてみせている。
観終わったあとは、何だか心の中のモヤモヤが吹っ飛ばされて、元気やワクワクや楽しさだけが沸々と湧いて来る。
出て来るのは全て、可愛くて、綺麗な女性ばかり。
今目の前にある、何気ない、普通の日々が送れる幸せに、人は、それが当たり前だと気づかない。物心ついた頃から、大きな波を何回もくぐり抜けて来た為に、小学生にして平凡が実はとても贅沢な事だと思いながら生きて来た自分でさえも、当たり前の事、波風のない普通の日々の有り難さや幸せを忘れかけていたことに気付かされた。
それは、やっと、この4年程で、波風の少ない普通の日々を送れるようになった証である事にも気づいて、ああ、私は今普通に生きられる幸せの中にいるのだとしみじみと感じる事が出来た。
クリスマスより一足早く、そんな事を振り返る事が出来、心の中に張りかけていたクモの巣や邪気も一気に吹き払ってくれた、ハロウィンにぴったりの楽しくもしみじみと胸に感じる舞台でした。
文:麻美 雪
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