2018.10.11㈭ PM19:30 渋谷 ギャラリー・ルデコ
泣き出しそうに曇った夕暮れの中、家を出て向かったのは、渋谷にあるギャラリー・ルデコという密やかなギャラリー。着いた頃には、蒼い夜の帳が下りていた。
演劇集団アクト青山主宰の小西優司さんとの演劇ユニットOrtensiaの『椿と女囚、月の夜』『我が子、ハムレット』を観て、もっと飯田南織さんの舞台を観たいと思っていたところ、『風曜日シアター8』を上演すると知り、企画・演出・朗読をするこの舞台を観に行った。
今日が千穐楽なので、詳細な感想は書けないのですが、これから観る方に結末やそれに結びつきそうな舞台の細かい設(しつら)いに触れない程度で書かせて頂きます。
5階まで上がり、ギャラリーの中に入ると、森の中の小さな教会に迷い込んだ様な美しく、秘めやかな設いが随所に施された世界が広がる。
パンと葡萄ジュースを受け取り、席に着く。間に休憩を挟み、1作目は朗読劇『とりかごの夢』2作目は朗読『とこしなえ郵便局『テノヒラの石』』を上演。
1作目の朗読劇『とりかごの夢』は、シェイクスピアの四大悲劇の中のとある作品とリンクする物語、2作目の朗読『とこしなえ郵便局『テノヒラの石』』は、リンクする物語のない物語なのだけれど、2つに共通するのは、小さな想いのすれ違いが、切なくも美しく悲しく昇華して行く物語であるということ。
特に、『テノヒラの石』は、互いが互いを深く想い、大切にも、愛おしくも思っているのに、小さなタイミングや想いの掛け違いとすれ違いによって、誰も、何も悪くないのに、胸を抉り締め付けられるような悲しみに陥って行く物語。
今回で、8回目を迎える『風曜日シアター』を、今回初めて観たのですが、普段は(7回目まで)は、癒しのホッとする物語を紡いでいるのだけれど、今回はハロウィン間近でもあり、切ない物語を描いた言わば、今までの『風曜日シアター』の裏面、B面として少しダークな色彩を描いた裏風曜日になっていると言う。
劇団おぼんろの主宰であり、物語の創り手で役者でもある末原拓馬さんの紡ぐ物語が、私は大好きなのだけれど、その末原拓馬さんの持つ悲しいくらいに切なくて、けれど、圧倒的に美しく温かい物語、その雰囲気を飯田南織さんが飯田ナオリとして描く物語に感じた。
勿論、拓馬さんとナオリさんでは、その色彩は違う。違うが故に、私は飯田南織さんが飯田ナオリとして描く物語に惹かれ、2作を観終わった後に、ナオリさんが紡ぐ物語の世界が大好きになった。
『とりかごの夢』も『テノヒラの石』もどちらも好きなのだけれど、『テノヒラの石』の言葉のひとつひとつが、胸に刺さって、目の裏に広がる物語の世界、ふたりの姉妹のそれぞれの想いが、胸に痛くて、切なくて、悲しくて、あまりに美しくて、涙がポロポロと溢れて止まらなくなった。
けれど、切なくて悲しいだけでなく、その先に見えたもの、観終わった後に旨に残った感情は、仄かなやさしい一点の希望の光と温かい美しさ。
その思いを掌にそっと包んで持ち帰った、素敵な舞台でした。
文:麻美 雪
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