劇団シアターザロケッツ:第七回舞台公演『シャンパンタワーが立てられない』

 2018.10.6㈯ PM14:00 中野ザ・ポケット

 夏の暑さがぶり返したこの日、林 里容さんの出演される劇団シアターザロケッツ第七回舞台公演『シャンパンタワーが立てられない』を観に、中野のザ・ポケットに足を運んだ。

 劇場の中に入ると、紅いソファーとローテーブル、壁にはシャンデリア、入口から緩やかにカーブを描いて店内に下りる階段、そして、真ん中にはシャンパンタワーが据えられたホストクラブの店内が出現する。

 潰れかけのホストクラブ「神無(かんな)」に新オーナー候補の来店予約が入る。神無を存続させる為、その日が新オーナー候補の誕生日だと知り、あの手この手のサプライズ企画し、店長を中心にキャスト一同入念に打ち合わせて臨んだはずだったのだが、そんな日に限って癖ある常連客、初回荒らしのキャバクラ嬢とその友人、店長の娘と名乗る女子大生、息子をナンバー1と信じ込んでいる母親などなど、一癖も二癖もある人々が次から次へと訪れる想定外になる。

 騒動の予感と気配が漂う中、内勤のカツオ(林 里容さん)や厨房志望の前橋亮太も新米ホスト「パンプキン」としてその渦中に巻き込まれ、女たちの言動に振り回され、次第に疲れて行くホストたち。それぞれの絡み合う事情と、その場しのぎの嘘に嘘が重なり、店はますます大混乱。

 果たして接待プランは成就するのか?暴走し始めた事態の行き着く先はどんな結末を迎えるのか…。

 今日が、千穐楽なので、詳細な感想は書けないのですが、この舞台全体に流れているのは、『優しい嘘』と『何が真実で何が嘘かというのはそれ程大事なことなのか?その人が真実と言うことが真実なのではないか?』というふたつのテーマなのではないかと感じた。

 口先三寸の自分が悪者になりたくない為に吐く、見せかけの優しい嘘ではなく、相手を心から思い、相手を元気にする為に吐く嘘は、嘘を吐かれた相手にとって、嘘は嘘でなく、真実なのではないか。

 その嘘が、その人が真実だと信じれば、その人にとってはその嘘が真実であり、嘘ではなくなる。その時、何が真実で何が嘘かという事がそれ程大事なことなのか、何を信じ何を嘘と思うかは、受け取り手の心ひとつ、受け取る側が真実だと思うものが真実でいいのじゃないかと思った。

 そして、もうひとつこの舞台の大きなテーマは、観客が思いっ切り笑って、楽しむこと。時折、しみじみしながらも、舞台の頭の先から爪先まで、笑いっぱなし。Dangerous Boxの舞台では見られない、コミカルで、踊る林 里容さんが見られる貴重な舞台でもあり、観終わった後、清々しさと元気と楽しさが身体中に温かく残る舞台でした。

文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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