OuBaiTo-Ri&ワニズホール提携企画:『イエドロの落語2018』

 3連休の初日、地元の気温が36℃を記録した風のない土曜日、劇団おぼんろのさひがし ジュンペイさん、わかばやし めぐみさんのユニットOuBaiTo-Riが2年ぶりに『イエドロの落語』を上演すると聞き、新中野にあるワニズホールに、OuBaiTo-Riプロデュース&ワニズホール提携企画『イエドロの落語2018』を観に行って来ました。

 私事ではありますが、先月18日、父がなくなり、今月は、観劇レポートのお仕事の演劇集団アクト青山テアスタ(夏)『輸血』とこの『イエドロの落語2018』を除いて、観劇を控えようと思っていました。

 それほどに、OuBaiTo-Riの『イエドロの落語』は、面白い。

 今回は、『死神』『猫の皿』『ケチの極意』『江島騒動』『番長皿屋敷』と5本の落語に、OuBaiTo-Riの2本の創作を加えて、混ぜ合わせた動く落語、立体落語『イエドロの落語2018』となっていた。

 『イエドロの落語』で、これは必ず見なければ夜も日も明けない『カツ丼女』から『死神』→『猫の皿』『ケチの極意』→『江島騒動』→『番長皿屋敷』→創作で締めるという流れになっていたのですが、これがまた、滑らかに全てが混ぜ合わされ、繋がれ、その中にも創作が程よく滑り込まされている上に、歌あり、踊りあり、さひがしさんとめぐみさんの絶妙な掛け合いと、吹き出さずには居られない顔の芝居ともう、これでもかと笑わされる。

 しかも、笑わされるだけではなく、最後の方で、ゾクリと人間の業の深さから来る怖さも感じさせながら、最後はまた、心置き無く笑わせて、観終わった後は、爽快な面白さと、掌でそっと包まれるような温かさを覚えた。

 『カツ丼女』も、観る度に少しずつ変化していて、何度観ても飽きず、これだけは毎回観ないと物足りない、毎回観たいと思う芝居なのですが、今回いつもとラストが違っていて、それがまた面白かった。

 落語を芝居で観せるというのは、生半可な事では出来ません。落語の笑いというセンスと芝居の上手さ、口調、口跡の軽やかさと良さ、亡くなった桂歌丸さんも仰っていましたが、美しい日本語で、話術で笑わせるのが落語、その話術と日本語で笑わせるというのは、実はとても大変で難しいこと。

 笑われるのではなく、言葉で話術で笑わせるそういう噺家、漫才師が少なくなって来た今、動きや顔の表情だけでなく、日本語と話術、芝居で1時間半笑わせ、時にゾクリとさせるさひがしさんとめぐみさんの『イエドロの落語2018』は、落語と芝居の良さと愉しさを心ゆくまで堪能出来ます。
 
 今回、出て来た落語のうち『江島騒動』を除いて、全て知っていて尚且つ好きな演目の落語とOuBaiTo-Riの創作の融合がとても自然です流れがよく、よく合っていて始終笑いが止まらなかった。

 私は、物心ついた頃から『笑点』を観て育ち、落語好きな両親に育てられ、父や友人、時に一人で寄席や二人会などを聴きに行ったりしていて、落語に親しみ好きだったから落語は身近なものだけれど、一般的には歌舞伎と同じように、敷居が高いと思われている落語。

 そんな人にこそ、OuBaiTo-Riの『イエドロの落語』は、観て頂きたい。落語って、こんなに身近で生活に密着していて、面白かったり、ほろっとしたり、ちょっと怖かったり、温かかったり、色っぽかったりするものなんだと解るはず。

 それは、歌舞伎も同じこと。歌舞伎も落語も実際に観たら、何十倍も面白くて、身近で楽しい。その落語の楽しさを『イエドロの落語』は、堪能させてくれます。

 笑うと元気になります。

 『イエドロの落語2018』を観て、1時間半ノンストップで、お腹の底から笑って、元気とパワーを貰って帰って来ました。
 『イエドロの落語』を観たら、きっと、落語に興味を持ち、寄席に落語を聴きに行きたくなります。

 暑い夏、上質な芝居と笑いで暑気払いさせて頂きました。

 来年もまた、『イエドロの落語』が観られたら、そう願って止まない『イエドロの落語2018』でした。

文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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