『れんこんだけのオードブル』を食べ終えた、程良いタイミングで、第2話が始る。
お料理で言ったら前菜。
常連の杉崎が、菜摘の店で食べたご飯の代金を払おうとして、財布を落とした事に気づき、菜摘と飄々と小さく揉めていた所に居合わせた、実家を継ぐ為に証券会社を辞めてゆく同僚にランチをご馳走しに来ていた2人のサラリーマン。
友人に奢ろうとしていたサラリーマンが、そんな杉崎を有り得ないなどといろいろ言った挙句に、自分も財布を落とした事に気づき、菜摘が店に野菜を収めている農家の人が店に来た時は、食事代を取らずにサービスしている事を知り、この場は何とか野菜の生産者を装い凌いで、後日食事代を払おうとすることから起こる、噛み合っていないのに噛み合ってしまう会話からなるコメディでありながら、最後はちょっとしみじみする話。
宮本京佳さんの菜摘と柳田幸則さんの杉崎の、どこかユーモラスなすったもんだのやり取り、小濱晋さんの笹本は、第1話の芯にある人の良さや純粋な気持ちと繊細過ぎる心の持ち主ゆえに、時に挙動が可笑しくなる森野とは打って変わって、証券会社を辞めて、実家の農家を継ぐ事にはしたけれど、どこかに屈託を抱えた、何処か冷めたような印象を受ける森野とは正反対の人物。
菜摘の野菜の作り手への思いや自身も実家の大豆農家を継ぐことを期待されながら、作り手の思いと大変さを知っているが故に自分にそれが出来るのかという不安で実家を継ぐことを迷っている菜摘の真摯な思いに触れるうちに、実家の農家を継ぐ思いが前向きな気持ちに変わってゆくにつれ、顔つきまでも変わったように見えた笹本。
新行内啓太さんの大和は、財布を落として食事代をツケにしようと言い訳をする杉崎をさんざっぱら、人としてどうかと思うと言うようなことを言いながら、いざ、自分も財布を落としたと知ると、素直に謝るのではなく、店に蕪を作って収めている人に成りすまして、くぐり抜けようとする履き違えたプライドと人の中にある一種のエゴ、小狡さ、身勝手さを感じつつも、根本的には悪い人ではないし、誰でもが身の中に持っている性質でもあるなと感じた。
株と蕪。言葉遊びの要素もあって、株の話が蕪づくりの話と噛み合っていないはずの会話が奇跡的に、噛み合ってしまうという面白さ。
話の途中で、嘘を突き通して食事代を払わないか正直に謝まるかの二者択一をお客さんに多数決を取り、それによって話の結末が変わってくるという、楽しい趣向もあり、しみじみとしながらも、随所に笑いも散りばめられたコメディだった。
第2話に出て来たお料理はこちら。
れんこんの丸ごとグリル(2種類のれんこんの食べ比べ)。
左が加賀れんこん、右が徳島れんこんのグリル。加賀れんこんはねっとり、もっちりホクホク、徳島はもっちりしゃっきり、どちらも微妙に違う甘さ。
れんこんの手前はソイマヨネーズ。大豆のマヨネーズだから、軽くて、美味しい野菜の味を壊さずに、レンコンの美味しさもソースの美味しさも両方感じられて美味しい。
このれんこんの丸ごとグリルのように、第2話は、噛みしめるほどにしみじみ胸に沁みる話だった。
文:麻美 雪
→次回は~第3話~メインとデザート編
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