劇団現代古典主義:THE 4th floor series『マクベス』

 2019.4.13㈯ PM14:00 代田橋 劇団現代古典主義アトリエ

  暖かく花散らしの風が吹く土曜日の昼下がり、代田橋にある劇団現代古典主義のアトリエに、劇団現代古典主義『マクベス』を観に向かった。

 一段高くなった舞台がある他は、舞台装置は何もなく、客席と舞台の間が殆どない程間近い舞台で織り成されたのは、シェイクスピアの4大悲劇のひとつ『マクベス』。

 『マクベス』のあらすじを、おさらいしておくと、このような物語。

 マクベスは、常々、心の底では王位を望んでいたスコットランドの武将マクベスが、スコットランド王ダンカンに取って代わりスコットランドの王になり、友人の武将バンクォーは、ずっと幸運に恵まれその子孫がおうになるという奇怪な予言を荒野で出会った三人の魔女に告げられ、マグベスの妻からは意志的な教唆をされダンカンから王位を奪うという野心を実行に移していく。

 マクベスは、王ダンカンを自分の城で暗殺し王位を奪ったその日から、手に入れた王位を失うことへの不安と疑心暗鬼から身内も敵も見境なくなり、次々と血に染まった手で罪を重ねて行き、マクベスを王位に就かせ、自らも権力を手に入れる為、手を血に染めたマクベス夫人もやがて罪の意識に耐えられなくなり、精神を病み自害する。

 このシェイクスピアの4大悲劇で有名な人『マクベス』を、同時進響劇(どうじしんこうげき)という、1つの舞台の上で時に台詞や登場人物画シンクロし、交差し、関わり合いながら同時に複数の場面を描くという劇団現代古典主義独自の上演方法で織り成すことにより、70分と言う短く凝縮された時間で、わかり易く見応えのある舞台が紡がれる。

 シェイクスピアの『マクベス』を土台にして、更にわかり易くする為に、原作には無いマクベス夫妻の娘イシュラ、イシュラの弟イアンを登場させることにより、なぜ、3人の魔女は、マクベスを破滅させ、なぜ、マクベスは殺され、マクベス夫人が精神を病み死んで行ったのかがわかる。

 劇団現代古典主義版『マクベス』は、戦に勝利し、3人の荒野の魔女に『あなたは王になる』と予言を受け、マクベスの中に眠っていた野望を目覚めさるが、魔女の1人は、マクベス勝利させる為に、マクベス夫人により悪神の生贄に捧げられ死んだ実の娘イシュラであり、王冠をめぐるマクベス一族3人の思惑が呼ぶ悲劇を同時進響劇で描いている。

 自分を生贄にした母と知らぬ事とは言え、その原因を作った父マクベスとマクベスの野心への復讐と母により虐待されている残された弟を護る為、イシュラは魔女になり、父マクベスと母マクベス夫人を破滅に追い込んだのだろう。

 野心に目が眩み、弟と自分が母に愛されず、虐待を受けていた事に気づかないマクベスへのイシュラの憎しみは、裏返せば、嘗ては自分と弟を父なりに愛情を持っていてくれたであろう父への愛情の裏返しにも思えた。

 マクベス夫人はなぜ、実の子二人を愛せず、虐待したのか?二人は本当にマクベスのこどもだったのか?実子だとすれば、母性の欠落に夜虐待だったのか、若しくはマクベス以上に権力と野心に対する欲望が強かった故なのか。

 マクベスが妻を自らの手にかけたのは、娘を悪心に生贄として差し出し、殺した妻への復讐であり、それは、マクベスの中にたった一つだけ残った父としての微かな娘イシュラと息子イアンへの愛情もあっての故ではないだろうか。

 イシュラの受けた仕打ちを考えれば、3人の荒野の魔女が、かの予言を以てマクベスを破滅へと追い込んだ理由が腑に落ちる。

 濃厚で濃密にして、鬼気迫る熱に圧倒され、息を詰めて見入った、70分に凝縮ながらシェイクスピアの面白さを初めて観る人でもわかりやすく且つ凄みを持って描かれた素晴らしい舞台だった。

文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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