2019.4.6㈯ PM13:00 新宿LIVE村
折からの風に吹かれて薄紅色の桜吹雪が舞う昼下がり、新宿LIVE村にベニバラ兎団『ICE CREAM GOOD BYE 完結編』を観る為に足を運んだ。
劇場に入り、今回予約していた『アイスクリームSPシート』の前から2列目真ん中列の右手通路寄りの席に着き、目を上げると、細部にまで洒落て美しく煌めいた舞台がある。
タイトルに完結編とあるように、『ICE CREAM GOOD BYE』は、1から完結編の今作まで3作続いているシリーズ物。いつもの様にあらすじを書こうにも、書けばそれだけでかなりの字数を費やす事になりそうなので、今回は、私の書いた感想から、どんな舞台だったのかご想像頂きたい。
『ICE CREAM GOOD BYE 完結編』で、この舞台を初めて観たが、配られたフライヤーに1と2の話な流れと事物相関図が入っていたので、上演前にざっと目を通していたのと、舞台自体がわかり易かったので、今回初めてこのシリーズを観た人でも、物語の中にするりと入り込んで行ける。
観ながら私の胸に去来したのは、現在(いま)は過去の積み重ねであり、未来は現在の積み重ねだということ。現在(いま)だけでも未来だけでもなく、過去に縋るのでもなく、過去があるからこその現在(いま)であり、現在(いま)があるからこその未来であるということ。
どんなに辛く、悲しく、忘れてしまいたい記憶でも現在の、そして、未来の自分を形造るものだから忘れてはならないし、私の意志を無視して私の辛かった記憶、悲しい記憶を消してあげるなどと他人にその記憶を勝手に消されようとしたら、宣告師シガラ(IZAMさん)やシガラの弟子のトコナメ(青野 楓花さん)のように、私の負の記憶を消そうとするものと闘うこと選ぶだろう。
自身の経験を顧みれば、悲しみと辛さが私を少しだけ強くし、愛すること、愛されることの幸せを深く濃く感じる事が出来るようしてくれたと今思う。愛する両親を亡くしたが、2人から貰った愛で今の私があり、生きて行けるのであり、その記憶を他人に消されたくはない。そんな事を思った。
悲しく辛い思いなんてしない方が良いに決まっているが、悲しく辛い思いや経験をしたのなら、それを記憶から消すのではなく、それが、どんなに辛く大変で時間のかかる事だとしても、それさえも私が生きてきた証だと、その記憶する含めて、今、こうして此処に私がある事、積み重ねて来た時間が愛おしいと言えるように生きたいと思うし、そうして54年の時間を生きて、悲しみも辛さも無駄ではなかったと、生きて来て良かったと心から言える今がある。
愛する人、愛しい日々の記憶まで、勝手に消して良いのか?過去に囚われ、縛られるのではなく、過去の愛し愛された記憶、忘れたくない記憶と悲しみ、辛ささえ自分の生きてきた証なら、忘れたくない、失いたくないと思う。
その人の記憶を他者が消すというのは、悲しく辛い記憶だけでなく、大切な人たちや愛おしい日々、愛し愛された記憶をも消しさるといあことである。であるとするならば、それら全てを胸に抱いて生きて生きたい、そんな事を思った。
最後は頬を滑り落ちた涙が胸を伝い濡らし、要所要所に笑える場面あり、セットも衣装も凝っていて素敵だった。特に、女性の靴のヒールがとっても綺麗で、細部にまでIZAMさんのセンスが光る目にも楽しい舞台だった。
文:麻美 雪
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