2019.2.23㈯ PM13:00 コフレリオ新宿シアター
風は強いものの、日向に出れば麗らかに暖かな土曜日の昼下がり、ベニバラ兎団 "5" Men's Theater 『UNPIECE』を観る為に、コフレリオ新宿シアターへと向かった。
劇場に入り、前から3列目真ん中列、左手に通路がある席へ腰を落ち着け、正面の舞台に目を向ける。
舞台右手に真っ白な3人がけのソファーと1人がけのソファーがあり、その前に食べ物や酒がのった木のローテーブル、ソファーから目を上げた斜め先の壁には、ビートルズのレコードジャケットが、かかり、舞台左手の床には虎の皮の敷物がペタリと寝そべり、その横には、電気スタンドを載せた小さなテーブルがある。
ここで開かれるのは、決して人には知られてはならない、同じ秘密を持つ男4人(小西優司さん、日比 博朋さん、後藤友希さん、久下恭平さん)が年に一度集まって、大騒ぎをするシークレットパーティー。今年もまた、いつものように4人だけのシークレットパーティーのはずが、招かれざる客がやって来て起こる大混乱!知られてははいけない秘密を持つ4人の男と、何も知らない1人(IZAMさん)の男。
果たして4人は秘密を守り切り、パーティーの終わりを無事に迎える事ができるのか!?
最後のピースは、嵌るのか嵌らないのか。。。
4人は年に一度のシークレットパーティーだけで、ポール、ジョン、ジョージ、リンゴとビートルズになぞらえた名前で呼び合い、開催されるパーティーの名はビートルズの名曲『ハード・デイズ・ナイト』を捩った“ ハード・ゲイズ・ナイト”。
カミングアウトしたくても、親兄弟、親戚、会社や友人知人たちの反応やそれによって、起こり得る様々な事柄や問題を思う時、いくら、LBGTについて知られ、カミングアウトして活躍する芸能人も受け入れられる様になって来たとはいえ、全ての人が受け入れ、理解出来るかと言えば、必ずしもそうではない。
そんな状況の中、親兄弟、親戚、友人、会社の同僚に、カミングアウト出来ない彼等4人。逡巡する内、カミングアウトしたいのか、した方がいいのか、しない方が良いのかも分からなくなって来る。それぞれに、悶々と悩みながら、唯一1年に1度4人で集まって、日頃の鬱憤をぶちまけ、イチャイチャして楽しみ、次の日からまた、それぞれ気取られないように生きる日常に戻って行く。
そんな、4人の切なさやもどかしく遣る瀬無い心情を、からりと明るく、さらりと軽やかで、洒落たコメディーとして織り成されてゆく。
観終わった後に、口を突いて出てきた言葉は滅茶苦茶面白い!という一言に尽きた。短い言葉では言い表せない面白さで、1時間半笑いっぱなしで、あっという間に感じるのにギュッと凝縮されていて、2時間の舞台を観たような感覚にもなる。
下品にならずに、嫌悪感も不快感もなく、そこにあるのは、楽しさと面白さ、そして、ゲイである事をカミングアウトするかしないかで悩み、自分たちがゲイである事を受け入れ、理解しようと対峙する者の少ない事、自らもまた、自分の身体と心の性別の認識のズレと相違に、どう向き合い、折り合ってゆくか考え続け揺れる心。
自分の従兄弟の秋広(久下恭平さん)が、ゲイである事を知り、理解は出来ないが理解しようとする為に、自分もこれからシークレットパーティーに、参加させろと言った翔太郎(IZAMさん)が、5年後のパーティーでも、拒絶はしないがまだ、理解はしてないと言いながら、秋広と二人きりになった時、キスをして『みんなには秘密』というラストが、洒落ていて小気味良かった。
薄々、秋広が幼い頃から見て来た翔太郎も、ほん人も無自覚の内に、秋広にだけ違う感情を持っていたのではないかと感じていたのが、やはりと胸の中で手を打つ面白さ。
そして、最後に気付く、『UNPIECE』のタイトルの意味。ビートルズには、5人目のビートルズと言われたビートルズの元ベーシストだった、スチュアートがいる。
翔太郎のシークレットパーティーでの呼び名はスチュアート。秋広にのみ嵌るが、まだ、彼らの事に対して心底理解はしていないから他の3人には嵌らないピース。だから『UNPIECE』なのではないだろうかと気づく。
男5人だけで、こういう内容のコメディーをやって、下品にならず、洒脱で小気味良く、軽やかでいながら、何かを胸にふわっと残すのは、この5人だからだと思った。
頭も心も空っぽにして笑い、観終わったあとに、元気と生きるパワーを身体に満ち、出来得るなら再演して欲しい、清々しい晴れやかな気分になる上質で洒落たコメディーだった。
文:麻美 雪
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