『れんこんきすた芸術祭』の観劇ブログも、残す所、このプレビュー編とショー&ライブ編、写真編の3つを残すのみとなりました。
5分間の作品プレビューですが、私はこれも立派なひとつのお芝居と解釈したので、敢えて写真は撮らなかったので、当日の写真はありませんが、中川朝子さんに了承を得て、Twitterに載せていらした『Gloria』のフライヤーの写真を掲載させていただきます。
芸術集団れんこんきすた30周年記念と芸術集団れんこんきすた主宰であり、女優であり、小劇場きっての男役である中川朝子さんの生誕40年記念にして、芸術集団れんこんきすた公演30回の記念すべき作品がこの『Gloria』。
上演前の舞台の為、この『Gloria』とは、一体どんな舞台なのかチラッと触りだけの5分間の作品プレビューなのですが、これがもう、5分間とは思えない、実に濃く深い超短編の舞台一本を観たような作品プレビュー。
作品プレビューで、明かされたのはこの『Gloria』が、「ドイツ随一の世界的スター」でありながら、第二次世界大戦前から敢然とナチスみ否定し、ヒットラーの誘いを撥ねつけただ一人、強い信念と心情を持ちナチスとヒットラーに立ち向かい、戦場で戦士達に『リリー・マルレーン』を歌い続け、「あれは、私の生涯でたった一つ価値のある行い」と言った女優マレーネ・ディートリッヒの闘いを描いたものだと言うこと。
濱野和貴さんと石渡弘徳さんは、この日は戦士としてマレーネの歌を聴くという役どころ。スタンドマイクの前に佇み、歌う(この日歌ったのはリリー・マルレーンではない曲)中川朝子さんは、正にマレーネ・ディートリッヒそのもの。歌声も歌い方も仕草もドレスの捌き方も、立ち居振る舞いも、マレーネ・ディートリッヒそのもので、思わず見惚れ、惹き込まれ、これは何がなんでも舞台を観に行かなければと思ったほど。
母の影響だけでなく、私自身も実は、10代の頃からマレーネ・ディートリッヒが好きだった。偶々、テレビで放送していたマレーネ・ディートリッヒの映画『モロッコ』のワンシーンの男装のディートリッヒの妖しい男の中に仄見える男っぽい女の色気と格好良さ、男装を解きドレスを着て女性に戻った時の妖艶で粋でマニッシュなエレガンスを纏った雰囲気と『100万ドルの脚線美』と言われた、惚れ惚れするような美しい足、よく見ると所謂絶世の美女といより、個性的な面立ちながら、彼女の内から溢れ出る知性と信念と立ち居振る舞いのエレガンスさと格好良さがその面に現れて美しいと感じる顔と弓なりの眉と、センスの良さ、それら全てがマレーネ・ディートリッヒという一人の女性、女優を形作っているその美しさに憧れた。
20代前半に、レニ・リーフェンシュタールという、マレーネ・ディートリッヒと同じ時代に生きた、ドイツの元女優であり、女性監督、カメラマンでもあった人の自伝に、マレーネ・ディートリッヒについて書かれていた箇所があり、それを読んで増々マレーネ・ディートリッヒが好きになった。
マレーネ・ディートリッヒが、ナチスにもヒットラーにも屈せず、ドイツでの女優としての名声も地位も全てを投げ打ち、アメリカへ渡りアメリカの市民権を取得し、第二次世界大戦中は、危険をも顧みず戦地を慰問し、兵士たちの為に『リリー・マルレーン』を歌い続け、ナチスとヒットラーに一人で闘い、1992年5月6日に90歳で亡くなったマレーネ・ディートリッヒのその闘いを描いた『Gloria』。
その生き方そのものも潔く、格好良く、美しかったマレーネ・ディートリッヒ。
そのマレーネ・ディートリッヒの強く激しく美しい生き方と闘いを描いた『Gloria』の作品プレビュー、中川朝子さんの歌う顔を観ているうに、マレーネ・ディートリッヒの姿が重なり、胸熱く、涙が競り上がって来た。
5分間の作品プレビューとは思えない程、濃密で熱が伝わる一編の芝居を観たような心持ちになった作品プレビューだった。
文:麻美 雪
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