儚い青に、滲むように霞む桜色。
手を伸ばし、掴もうとして零れ落ちて行く春の光。
指の隙間からすり抜けて行く幸せのように、空の青も、桜の色も、はらはらと散り、消えてゆく。
あなたのやさしい眼差しも、温かい掌も、柔らかな微笑みも、包み込む深い声も、瞳の中で空の青と桜の色と溶けて滲んで、ゆらゆら揺れる。
溢れ落ちないように、目を見開いて、空を見上げる。
胸の中で啜り泣く、押し殺した嗚咽が、熱い痼(しこり)となって、喉を塞ぐ。
ヒュッと息にならない息が漏れる。
言葉も無く、ひとり佇む。
幾億の声にならない言葉が、胸の中に降り積もる。
声を失くした人魚のように、焼け付くように痛む足の代わりに、悲しみが血を流す。
儚い青に、滲むように揺れる桜色。
瞳から、ぽろりと滑り落ちて、土に還る。
私ひとりを此処に残して。
photo/文:麻美 雪
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