ゲイジュツ茶飯:『ひゅーまん魂*ワ』

 2018.4.28㈯14時、新中野ワニズホールで、劇団おぼんろのさひがし ジュンペイさんがプロデュースするゲイジュツ茶飯の『ひゅーまん魂*ワ』を観た。

 ゲイジュツ茶飯の公演を観るのは、3回目ぐらいだったろうか。

 短編芝居8本、2時間程の上演時間。
 いつもとは違う舞台の設(しつら)い。

 舞台にも客席を作り、劇場を入って左側の壁を背にベンチを一脚置き、劇場入ってすぐの右手が受付カウンターのある左手に高いスツールが置かれている、その2箇所が舞台となり芝居が行われる作り。

 ベンチの前にもスツールの前にも、客席が迫り、舞台と客席の境は無いに等しい。

 8本ある舞台全てについて書くのは、流石に無理なので、その中で特に好きな演目2つについて書かせて頂きます。

 1本目は、『カツ丼女』。

 この短編芝居を初めて観たのは、さひがし ジュンペイさんとわかばやし めぐみさんのユニットイエロードロップスの『イエドロの落語 其の参』だった。

 その時から大好きな演目。『カツ丼女』については、何度も書いているので、どんな内容かは、『バイオレットピープルの涙』や『イエドロの落語 其の参』などでも書いているのでそちらのブログを見て頂くとして、前回のゲイジュツ茶飯の公演『バイオレットピープルの涙』では、小山蓮司さんと早野実紗さんが演じた『カツ丼女』もとっても面白くて良かったのですが、その時も、さひがしさんとめぐみさんの『カツ丼女』が観たいと思っていたので、今回お二人の『カツ丼女』が観られて嬉しかった。

 久しぶりのお二人の『カツ丼女』は、掛け合いの台詞や間が、お二人にしか醸し出せない何とも言えない間合いと息の合い方があり、『ラ・ラ・ランド』のあの曲を使っての踊りなども組み込まれ、台詞や演出、めぐみさんの顔も名前も知らないファンと名乗る男からの依頼で、毎日同じ時間にイベリコ豚のカツ丼女を受け取り、食べ続ける女性の掛け合いとやり取りが更にパワーアップしていて、お腹が痛くなるほど笑い転げた。

 やはり、お二人の『カツ丼女』は、最高で、大好きだ。

 2本目は、『セブンと老いぼれカウンセラー』。この短編を初めて観たのは、この脚本を書いた劇団おぼんろの末原拓馬さんの『TheワークショップShow』だった。

 怪獣と戦えなくなったウルトラセブンと、そんなセブンに、「戦えなくなったのは、セブン自身が目を背けている心の問題のせいだ」と言う老婆の話。

 末原拓馬さんのひとり芝居で観た『セブンと老いぼれカウンセラー』を、語りの小林真人さんとわかばやし めぐみさんの老いぼれカウンセラー、加藤正悟さんのセブンの3人で紡ぐ芝居になっていた。

 セブンが怪獣と戦えなくなってしまった理由に、常に戦い、勝たなくてはならないヒーローの孤独と辛さ、戦い続ける日々の中で、戦う意味と自分を見失いそうになる脆さなど、人間がいる抱える悩みや葛藤をヒーローであるセブンも抱えもがくセブンの人間臭さと切なさ、なぜ、そこまでセブンに関わり、セブンに自身と勇気を取り戻させ、セブンに自己と対峙させようと親身になる老婆の正体を知った時、胸がグッと捕まれ、最後は切なさと温かさに涙が溢れて止まらなかった。

 わかばやし めぐみさんの老いぼれカウンセラーが、圧巻で一番好きだった。セブンに倒され散って行く最後の場面の老いぼれカウンセラーの姿が今も、目蓋の裏に焼き付いて離れない。

 いつか、わかばやし めぐみさんの老いぼれカウンセラーと末原拓馬さんのセブンで観たいと思ってしまった。

 ただ、8本の短編を休憩なしで一気に見るのは少し辛かったかなと思った。実はこの日、舞台が始まって1時間した所で、腹痛に悩まされ体調が優れなくなっていたので、途中で10分ほど休憩があったら、良かったなと思うのと、演目は半分ぐらいの方が、観やすいのと記憶に残りやすいかなとは思った。

 けれど、やはり、さひがし ジュンペイさんとわかばやし めぐみさんの『カツ丼女』は、最高だし、いろんな話と要素があって面白い舞台だった。

 文:麻美 雪
 

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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