Le Matin:『Le Matin‐ル・マタン‐vol.3』②

 『赤鬼と青鬼のタンゴ』の後は、質問コーナー。

 今回は、事前に小さな紙が配られていて、そこに質問を書いて、プラスチックの瓶に入れたものを、カシャカシャ振って、中川朝子さんと朝霞ルイさんが交互に引いて、質問に答えて行くというコーナーが、合間に第1部、第2部各1回ずつ挟まれるという趣向あり。

 質問コーナー以外にも、どちらかがソロの衣装に着替える間に、質問を引いて答える場面もあり。
 第1部の質問コーナーでは、私の『貰って1番テンションの上がる差し入れは?』の質問が、引き当てられ、ルイさんは、手書きのお手紙。

 朝子さんは、1.お花2.クッキー3.お煎餅、おかき。

 いつも、お二人の舞台を観に行く時にはハンドメイドのアクセサリーに、手紙を添えるのですが、これからも、手紙は心置き無く添えて、朝子さんには、美味しいおかきかお煎餅もちょこっと添えて差し入れしようと、心の中でニンマリした一瞬。

 質問コーナーで弾けた会場の空気が、次に始まる短編芝居『Dawn blood』で、一気に静かで張り詰めたBARへと変わる。

 前回の『Le Matin‐ル・マタン‐vol.2』で上演した『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』の前段になる話の『Dawn blood』が加わり、『Dawn blood』から『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』へと繋げてひとつの物語として綴られて行く。

 私の記憶だと『Dawn blood』から『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』へと繋げて上演するのは、昨年末の『cafe&bar MIROIR』に次いで2度目。

 『cafe&bar MIROIR』『Dawn blood』のブログはコチラから。
『Le Matin‐ル・マタン‐vol.2』『Dawn  Blood ~Mirage in Red ~』のブログはコチラから。
 『Dawn blood』は、中川朝子さんの営むBARに朝霞ルイさんの謎めいた男が訪れ、『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』でも渡される謎の箱を受け取って別れるまでを描いている。

 この時、既に『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』への伏線が張られている。

 謎の男は、人外。BARの店主も恐らくは謎の男と同じ種に属する人外であり、私は何度か観ているが、ヴァンパイアのようなものではないかと何となく思っているのだが。

 この初めての筈の出逢いの段階で、お互いに遠い過去の記憶の既視感のようなものを相手に感じているのではないだろうかと、私には思えてならなかった。

 既に、BARの店主は、謎の男が自分のかつてとても大切だった女(ひと)に関わる男である事に薄々気づいているようなそんな既視感を感じていたのではないかと思った。

 『Dawn blood』の後、まるでこの内容を歌ったかのような曲を歌う中川朝子さんのソロがあり、『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』へと繋がって行く。

 『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』を観る度にいつも思うのは、中川朝子さんのBARの店主にとっての謎の男とはどういう存在であり、朝霞ルイさんの謎の男がかつて一緒に過ごした女(ひと)は、どういう存在だったのかということ。

 去年観た時は、かつて、遠い記憶、遠い時間に、BARの店主は、実はその女(ひと)であり、転生かなにかして、微かにその時の記憶を残したまま、男として生まれ変わり、謎の男と出会い心に揺れが生じたのではないかと思ったのだが、『cafe&bar MIROIR』の『Dawn blood』と、今回、昼夜2回観て思ったのは、もしかしたら、BARの店主は、その女(ひと)の兄弟か身内、若しくは、謎の男の前、若しくは後に女(ひと)に出会い、密かにとても静かに激しく愛した相手だったのではないかと思ったりした。

 それは、相手に決して告げることなく、ただ、ひとり切ないまでの片恋だったのではないかと....。だから、その女(ひと)が謎の男の前から何も言わずに消えたのは、男に酷く傷つけられたと思い男に対して憤る思いと、その女(ひと)が愛した人だから、恐らくは人外である身の命を維持する為の糧になるであろう物を渡したのではないかと。

この、色艶(いろ)っぽくも、緊迫したシーンと、中川朝子さんの眼差し、表情を観る度に感じてしまうのは、あまりにも深読みに過ぎだろうか。(このシーン、『Dawn blood』野中で1番好きなシーンでもあります。)

 その女(ひと)の事を話す時のBARの店主の表情が、痛ましく、切なく、哀しい愛を感じぜずにはいられない。

 謎の男にしても、やはり、その女(ひと)は、特別な存在であり、心に刺さったまま抜けない、悲しい愛の棘であるのかも知れないと思った。

 静かに『Dawn Blood ~Mirage in Red ~』が終わり、この物語を思わせるようなお二人の歌へと移り、『Dawn blood』が終わった。

 『Dawn blood』、『Le Matin‐ル・マタン‐vol.2』の時と、台詞が微妙に変えてあったり、加わっていて、更に深く切ない物語になっていた。

 そして、昼夜で、衣装も台詞も微妙に違う変わっていて、終演後そのことを朝子さんに言ったら、『麻美さんのように2回観て下さる方の為に、昼回と衣装も台詞も少しずつ変えました。』と仰っていて、観客冥利に尽きると思った。

文:麻美 雪

→『Le Matin‐ル・マタン‐vol.3』③へ続く

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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