遠い記憶のように、薄れ行く景色。
人の顔も、抱きしめた温もりも、抱きしめられた柔らかさも、全ては遠い時間の果てにある。
ノスタルジー。
ひとことで言えば、それまでだけれど。
ひとことで終わらない、終われない時間がある。
爪の先に、目蓋の裏に、唇の真ん中に、胸の奥深く、或いは記憶の襞の中、或いは膚の奥、細胞のひとつひとつに、生温いまま残っているもの。
あなた。
あなたがまた、私の中に、ゆるく、消せない程には鮮やかに、まざまざと思い出すには薄衣を掛けたように、居る。
ノスタルジー。
あなた。
ノスタルジー。
ノスタルジーが、あなたと言う名に変わるまで?
いいえ、あなたがノスタルジーという名に変わるまで、あとどれだけ、遠い記憶の中で微睡めばいいの?
ノスタルジー、あなた。
photo/文:麻美 雪
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