Photo小説:『夜の迷路』

 夜の底、ひとりぼっちで、悲しいくらい何も見えない。

 虫の音も夜を横切る車の音も何も無い。

 ただ、ポッカリと夜の藍(あお)が口を開ける。

 その夜の藍に、パクリと一吞み。

 気つけば蒼い迷路に囚われて、退くも行くも儘ならぬまま、四方を硝子に囲まれる。

 何も映らない夜の底、硝子に映ったちっぽけな私だけが蹲る。

 苦しくて、息が出来ない。新しい空気が欲しい。月の光を求め、夜の天井を仰ぐ。

 行きたい。生きていたいの。たとえ、独りでも構わない。

 息苦しい、夜の迷路から出られるのなら。
 
 声の無い慟哭に揺り起こされて、独りベッドの上で、膝を抱える私に気づく。

 夜の底で見た夢か、夜の底が見せた現か解らない。

 解ったのは、まだ、生きていたいということ。あなたが居ない人生でも、生きていたいと請うている私。

 やっと気づいた。私の恋が終わった事を....。


photo/文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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