夜の底、ひとりぼっちで、悲しいくらい何も見えない。
虫の音も夜を横切る車の音も何も無い。
ただ、ポッカリと夜の藍(あお)が口を開ける。
その夜の藍に、パクリと一吞み。
気つけば蒼い迷路に囚われて、退くも行くも儘ならぬまま、四方を硝子に囲まれる。
何も映らない夜の底、硝子に映ったちっぽけな私だけが蹲る。
苦しくて、息が出来ない。新しい空気が欲しい。月の光を求め、夜の天井を仰ぐ。
行きたい。生きていたいの。たとえ、独りでも構わない。
息苦しい、夜の迷路から出られるのなら。
声の無い慟哭に揺り起こされて、独りベッドの上で、膝を抱える私に気づく。
夜の底で見た夢か、夜の底が見せた現か解らない。
解ったのは、まだ、生きていたいということ。あなたが居ない人生でも、生きていたいと請うている私。
やっと気づいた。私の恋が終わった事を....。
photo/文:麻美 雪
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