ゲイジュツ茶飯vol.1:『スターターピストル』~序~

 先週の土曜日、朝一番で美容室に行った足で、新中野のワニズホールに、劇団おぼんろのさひがし ジュンペイさんのプロデュースのゲイジュツ茶飯の立ち上げ公演『スターターピストル』を観に行って参りました。

 チェーホフの戯曲『かもめ』とイプセンの銀の『人形の家』を下敷きに、さひがし ジュンペイさんが作・演出、プロデュースしたゲイジュツ茶飯の第一回目の公演、『スターターピストル』は、女性8人のみで描く4篇の物語から紡がれる。

 4篇とは言ったけれど、その内の2篇は、主人公の名前と年齢、女子高生と老人ホームに住む老女という違いのみで、台詞も基本的な話の内容もほぼ同一なので、細かく言うなら3篇の物語からなる舞台。

 このタイトルの意味するものは何だろう、『かもめ』と『人形の家』を下敷きに、どのような女たちの物語が織り成されるのだろうと、地下へと続く階段を降り、劇場に足を踏み入れた。

 さて、『スターターピストル』について書く前に、チェーホフの『かもめ』、イプセンの『人形の家』って、タイトルは知っているけれど、そもそもどんな内容?という方も居られると思うので、ざっと内容を要約。

   【かもめ】のあらすじ

 チェーホフの『かもめ』は、4幕からなる美しい湖を背景にさまざまな恋が織りなす人生模様を描いたチェーホフの戯曲。
 『かもめ』は、まだ読んでいなかったので、調べたあらすじをざっと下記に要約します。

 作家志望のトレープレフと女優を志すニーナ。ニーナを主役にしたトレープレフの芝居の失敗の後、トレープレフの母の愛人である小説家のトリゴーリンを愛し始めたニーナに銃で撃ち落としたかもめをニーナに捧げて、「今に僕は自分を撃ち殺す」などと言い、ニーナを詰った挙句、恋敵トリゴーリンへの決闘を申し込んだり、自殺未遂などの騒ぎを起こしたトレープレフ。

 一方、モスクワへ戻ろうとする作家トリゴーリンに、自分もモスクワに出て女優になる決心をしたと告げ、トリゴーリンと一緒になり、子を生んだものの、やがて捨てられ、子にも死なれ、女優としても芽が出ず、今は地方を巡業しているニーナ。

 2年後、作家として名を上げたかつての恋人トレープレフが仕事をしている所へ、巡業で近くに来ていたニーナが現れ、「私はかもめ」という謎めいた言葉を残し、感動の再会も束の間、「あなたを永久に愛ら、ここに留まって欲しい」というトレープレフの申し出を振り切り、ニーナは立ち去り、そして銃声が響く。

 この銃声の意味するものとは、ニーナとトレープレフ、それぞれが心に秘める「かもめ」は飛翔できるのか?

 『スターターピストル』では、3幕の2年後のニーナとトレープレフの再会からニーナが立ち去り、銃声が響く所を下敷きに2つの話が紡がれる。

   【人形の家】のあらすじ

 イプセンの有名な戯曲。日本でも弘田三枝子のタイトルもそのまま『人形の家』という歌謡曲のモチーフになったり、チェーホフの『かもめ』と並んで、日本でも繰り返し舞台が上演されている。

 イプセンの『人形の家』を呼んだのは、20代の頃なので、念の為にこちらもあらすじを調べたものを下記に要約しておきます。

 夫に小鳥のように愛され、人を疑う事も知らず、貧しい人に惜しまずに分け与え、心の何処かで、自分を人形のように猫かわいがりする夫の愛の性質に気づきながらも、苦労も不安も、不満もなく、平和な生活を送っていた弁護士の妻ノラ。

 しかし、夫がノラへの馴れ馴れしい態度に腹を立てクビを言い渡した部下が夫の留守にノラを訪れ、ノラが夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたことをタネに、自分のクビを撤回するように夫に頼むようノラを脅した事を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラを罵るが、改心した部下から捏造の証拠である借用証書が送られて来て、夫の危機は過ぎ去る。

 先ほどまでノラを罵っていた態度を豹変させ、再び微笑んで甘いことを言い放つ夫に対等な人間として、絶望や悩みを共有し、喜びを分かち合える存在、「1人の人間」として自分を見ていないことにノラは絶望し、夫の人形として生きる事を拒否し、一人の女、一人の人間としての自分、自己に目覚めたノラは、一人の人間として自分の足でしっかりと歩き、生きてゆく事を選び、夫の制止を振り切り、夫と3人の子供を残して家を出る。

 『スターターピストル』では、ノラの秘密が夫に知られる所からラストまでを下敷きにひとつの物語が紡がれる。

 『かもめ』と『人形の家』のあらすじの要約が長くなったので、『スターターピストル』の感想は次回へ続きます。

文:麻美 雪


麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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