もしも、あの時に戻れるのなら。
何かが変わっていたのだろうか。
失うことを畏れ過ぎて、自らの手で壊してしまった幸せを悔いていると言うには、我儘だと解っている。
来るか来ないか判らない、別れを恐れた。
あまりにも、幸せだったから。
失うことが、耐えられなくて、いつか、どちらかの心を変えてしまう時が来る事が苦しくて.....。
だから、あなたを愛し過ぎる前に、幸せから手を離してしまった。
赦されるなんて、思ってはいないけれど、こんな麗らかで優しい朝に照らされていると、あなたのことを、あなたと刻んだ穏やかな時間を思い出す。
想い出は美し過ぎて、儚く脆くて、それ故に愛おしく、深く胸に残る。
春の終わりを惜しむように、はらはらと散ってゆく桜花のように、淡く優しく切なく、いつまでも消えない幻のように.....。
掌に掬おうとしても、零れ落ちてゆく水のように、夏が上げる刹那の飛沫のような、束の間の時間、永遠の幻。
もしも、あの時に戻れるのなら、ただひと言、
『愛してた』
と伝えたい。
あの日、あなたと過ごした時間は、一番幸せな季節だったと。
忘れ得ぬ永久の記憶、永遠の愛の幻。
photo/文:麻美 雪
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