『永久の記憶永遠の幻』

 もしも、あの時に戻れるのなら。

 何かが変わっていたのだろうか。

 失うことを畏れ過ぎて、自らの手で壊してしまった幸せを悔いていると言うには、我儘だと解っている。

 来るか来ないか判らない、別れを恐れた。

 あまりにも、幸せだったから。

 失うことが、耐えられなくて、いつか、どちらかの心を変えてしまう時が来る事が苦しくて.....。

 だから、あなたを愛し過ぎる前に、幸せから手を離してしまった。

 赦されるなんて、思ってはいないけれど、こんな麗らかで優しい朝に照らされていると、あなたのことを、あなたと刻んだ穏やかな時間を思い出す。

 想い出は美し過ぎて、儚く脆くて、それ故に愛おしく、深く胸に残る。

 春の終わりを惜しむように、はらはらと散ってゆく桜花のように、淡く優しく切なく、いつまでも消えない幻のように.....。
 
 掌に掬おうとしても、零れ落ちてゆく水のように、夏が上げる刹那の飛沫のような、束の間の時間、永遠の幻。

 もしも、あの時に戻れるのなら、ただひと言、

 『愛してた』

と伝えたい。

 あの日、あなたと過ごした時間は、一番幸せな季節だったと。

 忘れ得ぬ永久の記憶、永遠の愛の幻。


photo/文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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