あれはもう、遠い記憶。
過ぎ去った恋の儚い欠片(かけら)。
ひとひら、ふたひら、拾い集めて、活けてみたら、触れたら散ってしまいそうな、淡い桜色の花になる。
雨を求めて咲く、束の間の季節にだけ咲く紫陽花。
花びらに滴る雨の滴は、あの日私が流した恋の涙。
眩暈がするほど、遠い時間に隔てられ、塞がった傷は、
もう、甘い感傷でしかなくて、恋の古傷を疼かせはしない。
今、胸にあるのは、懐かしい切なさだけ。
移り気なんて呼ばせない、紫陽花はただ移ろいゆく時間に色を変え、時に寄り添っただけ。
そう、今の私の心のように.....。
photo/文:麻美 雪
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