鈍色の雲。
鬱蒼と揺れる漆黒の梢。
風にざわめく、空。
囁き交わす草木。
大樹の蔭で震える花たち。
風がざわめき、樹々を揺らし撓(しな)らせる。
モノクロの風が囁く。
耳元に注がれる、残酷な毒。
あなたを疑うくらいなら、耳を閉ざし、目を閉ざし、唇を閉ざす。
それでもまだ、何の証もない、無責任で悪意に満ちた風聞(ふうぶん)を、風が、樹々が囁き、ざわめくと言うのなら。
私の心を黒い傷みで苛んで、私を壊し、侵蝕しようと言うのなら、この命も閉ざして、土に融かしてしまおうか。
風がざわめく。
寝苦しい夏の夜の悪い夢。
photo/文:麻美 雪
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