下北沢Bar Project:『カラクリ危箱祭』

 2019.1.13㈪ 下北沢 Bar DUKE CAPO

 松の内も明け、お正月気分も抜けた夕暮れの下北沢を篠原志奈さん主宰の『下北沢Bar Project カラクリ危箱祭』を観るために、下北沢 Bar DUKE CAPOへと足を運んだ。

 『下北沢Bar Project カラクリ危箱祭』は「芝居の敷居ってなんか高くて…」「Barとかお洒落過ぎていけないよ…」という方々にももっと気楽に、友達の家に遊びに来る様な気持ちで、窓の外を眺めながら缶ビールを飲む様な、皆とわいわいしたり、ぼーっとご飯食べたり飲んだりしたり、そんな感じで楽しんで欲しいと劇場を飛び出し、下北沢の大好きなBARとコラボして素敵なイベントを行うというとてもアバンギャルドな企画《下北沢Bar Project》として始まり、10年弱、形を変え場所を変え主催を変えて行って来たものを、そろそろ少人数の上質な芝居がまたやりたい!会話劇でお客様をにやにやさせたい!と言う篠原志奈さんの思いから、篠原志奈さんが主宰となり、志奈さんの大好きな役者さんにだけ声をかけ、美味しいお酒やご飯をお願いし、キラリと光る台本書いて欲しいと頼み込み、新たに始動したもの。

 公演は、1/13.19.26日の19時からの3公演で、同じ4本の短編芝居を役者と演出を変えて行われるので、同じ演目でも役者と演出が変わる事により、全く違う世界が展開される一期一会の公演。時間が許せば、3日間観たかった。

 まだ、千穐楽を迎えていないので、これからご覧になる方もいられるので、あまり事細かに感想を書くのは控え、メモ的な形で感想を書かせて頂きます。

 《窓枠より愛を込めて》
 すぐに恋に落ちてしまう恋愛体質の先輩刑事としっかり者の後輩刑事が、とある容疑者の女性の張り込みをしていて起こるドタバタ喜劇。

 えっ!こんな事で好きになってしまうのかという程、すぐに恋をしてしまう恋愛体質の刑事、こんな人が日がな一日容疑者の女性を何日間にも渡り張り込んでいたら、まずいぞ、危ないぞと言う予感を抱えながら観ていると、あぁ、やっぱりだぁとなりながら観るうちに、何だかその刑事がちょっと切なくなったり、憎めない愛嬌を感じたり、でも、やっぱり馬鹿馬鹿しかったりし、昔少しだ付き合った事のある刑事の彼の事をふっと思い出したりした。

《何気ない話》

 気怠い月曜日の朝、行きたくないなぁという気持ちを吹っ切って何とか出社したOL3人の内容があるような無いような、一周回ってやっぱり何にも内容が無い、何気ない話がひたすら展開される話。

 会社勤めや通学している誰もでもが、毎週月曜日に思い、感じる、「月曜日か、会社行きたくないなぁ、学校行きたくないなぁ」という、その気分が、解るなぁ、身に覚えあるよね、そうそうと思いながらにやにやしながら観てしまった。月曜日が終われば、週末の休みに向けてカウントダウンして乗り切れるのだけど、月曜日の朝、出社或いは登校するまで、「行きたくないなぁ」「休んじゃおうかな」という葛藤とモヤモヤが続く、そんな気分が気怠さとなって漂っていた。

《『せーの』でかけるよ》

 こんな滅茶苦茶な内容を盛り込んだテレビドラマの脚本なんて書けないよーとスランプに落ち込んだ脚本家と書けないという脚本家に、何とか書かせようとするスタッフの話。
 『何気ない話』と実は、うっすら繋がっているような。

 4本とも言葉の掛け合い、間合い、テンポとリズムが良くて、楽しいのですが、特にこの話それらが良くて、面白い。
 脚本家をスランプから抜け出させ、書く気を起こさせようと話しているうち、話はスタッフの彼の話になり……。

 女心の切なさも滲ませながら、可笑しみに包まれたコメディ。

 ラストでこのタイトルの意味が解ると、ニヤッとする。

《ゆれる、ヒモ、あり》
 同棲中の彼女と喧嘩して、家を飛び出し、気づいたら何故か、遠く離れた場所にいた男が、ふらりと入った田舎のレストランで、何故か自分に嫌な態度をとるウェイトレスとの丁々発止の末に、気づく彼女への思い。

 《『せーの』でかけるよ》と繋がっている。

 この話の中に出てくるお料理を、実際に食べながら観ることが出来る。この日は、中華丼。日によって、出て来るお料理は違うかも知れない。

 この日は、中華丼の具についてのやりとりがあり、中華丼を食べながら観ていた身としては、ニヤニヤする台詞の応酬に面白さが増した。

 所々に、真理をつく言葉や胸に沁みる言葉があり、笑いながらほんのりじわっと来て、最後まで観ると、3話目とこう繋がって、回収されるのかとストンと腑に落ちる楽しさがあった。
 今年の初観劇に相応しい、いろんな笑いが楽しめて、観終わったあと楽しい気分に満たされて、笑顔で劇場を後にし帰路に着ける舞台だった。

文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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