2019.12.14㈯ PM18:00 池袋オペラハウス
師走の慌ただしさの足音が近づく池袋を、Mono-Musica『BLACK SANTA GIRL』を観るため足を運んだ。
劇団現代古典主義の土肥亜由美さんが、Twitterで紹介していて、過去の公演のダイジェスト動画を見て、その格好良さにすぐこの舞台のチケットを取ったMono-Musicaは、女性キャストだけのミュージアム劇団。
何もない舞台の上で紡がれるのは、人生の終演をプロデュースすると謳う国内最大手の葬儀会社の腕利き営業マンルドルフ=グッドマン(杏さん)が、悪い子にプレゼントを届けるブラックサンタガールだと名乗る黒いドレスの少女・シュトゥルーデル(ひかりさん)と出会い、自分専属のトナカイになって欲しいと言う所から始まるキュートなブラックサンタガールズとサンタを愛する相棒のトナカイたちとの、クリスマス・ミュージカル。
全編に歌とダンスと笑いが散りばめながら、キュッと胸が切なくなって、じんと涙が滲む場面あり、最後はじんわり温かく明るい気持ちになるクリスマスにぴったりの舞台。
貧しい家の子や悪い子には、良い子や何不自由ない暮らしを送る家の子にクリスマスプレゼントを配るホワイトカラーのサンタクロースは来ず、来るのは片方だけの手袋とかボロボロの辞書とか、一見、役に立たない物をクリスマスプレゼントに配って歩くブラック・サンタクロース。
そのブラック・サンタクロースの相棒のトナカイは、元は事故や病気等によって亡くなった人たちの中から、ブラック・サンタクロースが自分専属のトナカイとしてスカウトして来た者たち。
シュトゥルーデル(ひかりさん)以外のブラック・サンタクロースには、ずっと共に居るトナカイがいるが、シュトゥルーデルは、毎年スカウトしてはトナカイと専属契約する事が出来ず未だ専属のトナカイがいない。
そんな時、事故にあってこの世とあの世の狭間の世界に自分の死を受け入れられないままやって来て、シュトゥルーデルに専属のトナカイになってくれと頼まれるあの『赤鼻のトナカイ』でお馴染みの伝説のトナカイと同じ名前のルドルフ(杏さん)。
自分の死を受け容れられず、戸惑いながら、時にシュトゥルーデルに反発しながらも、他のトナカイや嘗てはクリスマスプレゼントを入れるの靴下も買えない貧しい家の子だったシュトゥルーデルの子どもを喜ばせるクリスマスプレゼントを配るホワイトカラーのサンタクロースになりたいと言うシュトゥルーデルの思いを知り、少しづつシュトゥルーデルや他のトナカイたちに心を開いて行くルドルフ(杏さん)。
ルドルフもまた、学校にも通えない貧し家庭に育った子供であった。幼いある年のクリスマスに貰ったボロボロの辞書で字を覚え、独学し、腕利きのセールスマンになったのは、ブラック・サンタクロースからのプレゼントだったと気づいたルドルフの晴れやかな顔に、心に差した温かな光を感じた。
シュトゥルーデルを含む4人のブラック・サンタクロース全員が、ホワイトカラーのサンタクロースになる資格を得た時、恵まれない家の子や悪い子にプレゼントあげるブラック・サンタクロースが居なくなると気づいた時、その子供たちの為に自らブラック・サンタクロースで居ることを選んだシュトゥルーデルと仲間たち、トナカイとブラック・サンタクロースたちの間に通い合い、強く結ばれた絆と愛を感じ、切なくも明るい温かさを感じた。
片方だけの手袋も、ボロボロの辞書辞書も、寒くて震えている子には、何よりも温かく寒さを凌げたか、ボロボロの辞書は、学校に行けない子供に言葉や文字を教え、知性の扉を開き、学ぶ事を教え、学ぶ事によって生きる事、自らを陽の差す方へ導くよすがになるプレゼントになる。
全ては見方ひとつ、考え方ひとつ、見る角度で物事は明るく変わる。
そんな思いが胸に去来した、クリスマスにぴったりの素敵な舞台だった。
文:麻美 雪
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