2019.7.14㈰ PM14:30 阿佐ヶ谷アートスペースプロット
小雨降る鈍色の空の下、阿佐ヶ谷アートスペースプロットに、幻想芸術集団 Les Miroirs耽美童話の会・第六章『薔薇物語』を観に行って参りました。
朝霞ルイさんの活動15周年記念の今回の舞台は、『櫟の館』と『薔薇物語』の2本を上演。15周年の感謝と普段演劇を観ないと言う方にも、気軽に演劇を楽しみ、興味を持って頂けるようにと映画と同じ、1舞台1800円という破格のチケット料金で観られた。
以前の耽美童話の会・第五章で、『櫟の館』を観ていたので、今回は寓話的古典喜劇の『薔薇物語』を観た。
『薔薇物語』は、ギヨ〜ム・ド・ロリスによって書かれた13世紀フランスの寓意的な恋愛指南と言った内容の話で、ナルシスの泉で愛の神の矢に射抜かれた詩人が、美しい薔薇の蕾に恋をし、様々な感情を擬人化した夢の登場人物達に翻弄されながらも、真の愛を模索するというロマンティックな幻想劇。
「悲哀」「強欲」「中傷」「嫉妬」「理性」「貧困」「富」「悦楽」「歓待」などの感情を擬人化し、登場させ寓意の衣を纏わせ、真実の愛を手に入れるまでを伸びやかに時にコミカルさを加えつつ描いた古典喜劇は、今まで観た幻想芸術集団 Les Miroirsとは、異なる色彩ながら、幻想芸術集団 Les Miroirsの色彩もきちんと感じつつ、軽やかに楽しめた。
木村美佐さんの愛の神が時折見せる愛らしい茶目っ気と威厳、転じて「嫉妬」や「中傷」の黒い火のような激しさに見入り、武川美聡さんの「悦楽」の艶やかなたおやかさと『歓待』の無邪気で親しげで鷹揚な柔らかさに心安らぎ、白城さくらさんの薔薇の蕾の愛らしい上品さ、朝霞ルイさんの凛々しくも純粋で端々に垣間見得る軽やかさに、45分という時を忘れて魅入られて行った。
ふわふわと笑いながらも、軽みの衣のなかに隠された、愛を取り巻く感情や愛の本質と真理の寓意を込めた『薔薇物語』は、観終わって時が経つうちに、恋をする者、恋の暗い感情に囚われる者ににチクリと甘くて痛い棘に刺された事に気づきもする。
それでも人は、馥郁たる薔薇の香りに誘われるように恋をしては、真の愛の愛らしい花の蕾を己が掌の中に包み込みたいと思ってしまうものなのだなと思った。
佐藤まどかさんの美しいフルートの生演奏と共に紡がれた美しく馨しい舞台だった。
文:麻美 雪
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