PhotoStoryGallery:『毒の華』

 咲いて咲かせて、毒の華。

 あなたの心に焼き付いて、記憶からも消えない程に、残ればいい。

 あなたが見たい私の姿、その儘に。

 あなたが求めた、触れたら壊れ、堕ちてゆく、妖しい毒を孕んだ女の残像を。

 何処にでもいる、目立たない、庭の隅でそっと蹲って咲いている私ではない、毒の華。

 咲いて咲かせて、毒の華。

 あなたの心に染み付いて、消えないならば、本当の私の花なんて、手折ってしまえと思ったけれど。

 淋しい時に、そっと寄り添い抱きしめた、やさしい花が愛しくて、私は毒の華になり切れない。

 咲いて咲かせて、毒の華。

 私は、庭の片隅で、あなたに気づかれることも無く、ひっそりかんと、悲しい時に寄り添って、心に咲いたやさしい花に看取られて、土に還ります。

 咲いて咲かせて、毒の華。

 あなたの最期を看取るのは、何処に咲く毒の華。


photo/文:麻美 雪

 

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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