手を伸ばしても遠い。
もどかしい距離にあなたはいる。
触れたら消えそうで、遠ざかると近づいて、近づくとこの手をすり抜けてゆく。
色の無い空に浮かぶ、輪郭のない太陽みたいに、ゆらゆらと揺らめく幻のよう。
蜃気楼のような、あなたの面影を霞む瞳の奥に見る。
ゆつゆつと固まらない、生温いゼリーのような波に抱きしめられて、攫われてゆくような不確かな記憶に沈んで行く。
私は、現在(いま)にいるの?
あなたと過ごした、遠い過去(きのう)にいるの?
抱きしめないで、もう。
私に構わないで.....。
今は、独りで眠りたい。
愛の切なさを知らない国で、あなたを忘れて、眠りたい。
photo/文:麻美 雪
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