『紫陽花』

 あれはもう、遠い記憶。

 過ぎ去った恋の儚い欠片(かけら)。

 ひとひら、ふたひら、拾い集めて、活けてみたら、触れたら散ってしまいそうな、淡い桜色の花になる。

 雨を求めて咲く、束の間の季節にだけ咲く紫陽花。

 花びらに滴る雨の滴は、あの日私が流した恋の涙。

 眩暈がするほど、遠い時間に隔てられ、塞がった傷は、

 もう、甘い感傷でしかなくて、恋の古傷を疼かせはしない。

 今、胸にあるのは、懐かしい切なさだけ。

 移り気なんて呼ばせない、紫陽花はただ移ろいゆく時間に色を変え、時に寄り添っただけ。

 そう、今の私の心のように.....。


photo/文:麻美 雪

麻美 雪♥言ノ葉の庭

昼は派遣社員として仕事をしながら、麻美 雪としてフリーのライター、作家をしています。麻美 雪の詩、photo short story、本や音楽、舞台など好きなものについて、言葉や作品を綴っております。

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