冷たい冬の風が吹く、先週の金曜日、終業と同時に会社を飛び出し、仕事終わりに向かったのは恵比寿から歩いて7分ほどの所にあるにある恵比寿CreAtoでTwitterのフォロワーさんでもある“まほろば”が主催の『HO. KO. LA』という物語を、演劇と映像とまほろばを始め、四組の和楽器のバンドによるライブ演奏で綴るというライブイベント。
ギュッと要約して言うと上記のような内容のライブイベントなのですが、観ていない方にもイメージし易く説明しますと、『HO. KO. LA』は、和太鼓[ 達-TATSU- ]さんと歌[ 春-HARU- ]さんによる夫婦音楽家である“まほろば”が『お客様ひとりひとりへの"おもてなし"をコンセプトに、HO.KO.LAをめぐるおとぎばなしの世界へお誘いし、そこで一曲一曲をご堪能頂くライブイベント』。
ただ、曲を次々に演奏していくのではなく、歴史ある和楽器を現代のセンスでそれぞれの奏者が曲の解説を添えて奏でることで観客の記憶の中に眠る原風景=心の琴線に触れ、人が本来持っていた邪気(ストレス)のない風のように自由な自無邪気な自分の心の感覚を取戻して貰えたらをテーマに、ライブ演奏だけではなく、演劇と映像によるHO.KO.LAの物語を紡ぎ、行き着く果ては、固まっていたり、閉じ気味になっている心の扉を開けて、伸びやかに健やかに自由に飛び回る感覚を味わって欲しいという、ちょっと今までにないライブイベント。
それぞれのバンドが、奥深い和楽器の味わいどころを、曲ごとに丁寧に紹介してくれるので、より曲もイメージしやすく、その曲の色彩や描き出すものが絵としてより明確に頭と心の中で像を結ぶ。
奏者が料理人みずからが料理の説明をするかのように和楽器で奏でる奥深い音色や奏法、曲の聴きどころなどを曲ごとに丁寧に紹介することで、和楽器がより身近に、ひとつひとつの楽曲がより、心に深く伝わって来る。
一歩会場に入ると、燃え盛り爆ぜる炎の映像と火の爆ぜる音を透かして、深い森のざわめきが仄かに聞こえる。正面には、『HO. KO. LA』の映像が静かに佇んでいる。
四組の和楽器のバンドは、それぞれ、花の化身、風の化身、雷の化身などになぞらえられていて、自然と連綿と続いて来た悠久の時間の流れを感じた。
それぞれのバンドの演奏も曲も素晴らしかったのですが、私がこの日一番、心に揺さぶられ、胸にズーンと響いたのは、やはり“まほろば”でした。
Twitterでフォローして頂いて、YouTubeで“まほろば”の奏でる音楽を聴いた時、何とも心地好く、達-TATSUさんの太鼓と春-HARUさんの歌声が、胸の深いところに静かに染み込んでゆくようで、『好きだな』と思い、ライブで間近に聴いてみたいとずっと思い焦がれていて、今回のライブイベントを知り、かけつけたのですが、本当に凄かった。
達-TATSUさんの和太鼓は、力強さだけでなく、時に頬をそっと撫ぜる風のようであったり、大地を湿らす慈雨のようであったり、夜をそっと包む温もりであったり、空から降り注ぐ陽射しのようであったり、和太鼓でこんなにも繊細で幾くつもの表情や色彩を感じられるものなかと思い、胸の真中にドーンと波動のように響く和太鼓の音に貫かれ、全身を音が駆け巡り、全身がカッと熱くなった。
春-HARUさんの歌声は、そっと髪を戦がせる風のようであったり、降り注ぐ春の陽のひかりのようであったり、大地を静かに濡らす慈雨のようであったり、夜の森を静かに照らすしっとりと静かな月の光のようでずっと聴いていたくなる心地好い声だった。
まほろばの奏でる音が、夜の静かな森の空に向かって、月の光のような、星のかけらのような、キラキラとした光が、蛍のように、悠久の時を生きた先人の魂の輝きのように、キラキラと煌めいて空に昇ってゆくような美しい色彩と景色を眼前に広げてゆく。
何だか泣きたいような温かさと美しさに見惚れ、聴き惚れているうちに、あっという間におわっていた、素敵なライブイベントだった。
文:麻美 雪
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